薬局向けの次世代薬歴システム「Musubi」(ムスビ)を提供するカケハシ。2019年1月に開催された「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2019」(主催は経済産業省)では、ビジネスコンテスト部門でグランプリを受賞。ベンチャーキャピタリストなど周囲からの評価も高い(関連記事)。同社を訪問し、代表取締役CEOの中尾豊氏に話を聞いた。

今回訪問した東京都中央区築地にあるオフィス。2018年夏に、新宿区四谷から現在のオフィスに移転した。全国の薬局への商談や導入を考慮し、新幹線と飛行機利用に便利な立地を選んだという(写真:川島 彩水、以下同)

■起業のきっかけ


患者が得する医療体験とは何か…

 大学卒業後は大手製薬会社でMR(医薬情報担当者)の道へ。充実した日々を送っていたものの、そのうち「医療領域で働く上で、患者に対する価値を出すこととは一体何だろう?」と考えるようになった。大学病院などでは2時間待ち続け、診察が数分で終わるという現実がある。そして門前薬局でも長い時間待たなければならない。

代表取締役CEOの中尾豊氏

 こうした日本の医療の中で、患者にとって利便性の高い仕組みを作りたいと考えるようになった。実現方法が分からなかったので経営大学院にも通った。MBAを取得するなど学びを重ねる中で見えてきたのが、より大きな視点での問題意識だ。

 世界でも類を見ない超高齢社会に突入し、労働人口の減少が見えている中で日本の医療費は膨張を続け、このままでは国民皆保険制度が破綻してしまう。しかし、患者側が健康意識を高めない限り生活習慣病の重症化予防は困難で、どこかで医療従事者が手厚くアドバイスする必要がある。

カケハシの概要(表:同社への聞き取りを基にBeyond Healthが作成)

 結論として、医療サイクルの中で患者が得する医療体験を提供すべきだと考え、“患者と医療をつなげるカケハシ”になりたいとの思いからこの会社を創業した。永続的なサービスにするために「志」「戦略」「人材」の3点を重視した。

 まず志では、医療に欠かせないインフラを作ることを目標とした。例えるなら医療における新幹線だ。その高い目標を達成するには、現在の医療状況をきちんと見極めて明確な世界観とストーリーを描く戦略が必要となる。ここまでは自分でも何とかなったが、志と戦略を極めてもそれを実現できる人間が私1人では立ち行かない。

 そこで私の不足している部分を補ってくれる人材として、大手コンサルから中川(貴史氏、取締役COO)を引き抜いて一緒に創業した。戦略と人材がそろえば、資金調達ができるようになる。このアプローチは、どんなスタートアップにも有効なやり方だと思う。