サービスの現状と課題

ブランディングは成功、課題はITベンチャーとしての筋力強化

鶴谷 約10年経過して、ようやくキャップスクリニックの認知度が向上してきた。我々は小児科をメインでブランディングしているが、約1万7000人いる日本の小児科医に広く知れ渡っている自負がある。勤務時間で換算すると、コロナ前には非常勤80%、常勤20%の割合だった。関東に限れば、およそ皆さんが知っている小児病院の医師には、キャップスクリニックの非常勤経験者が少なからずいる状態だ。

金谷 勤務登録にもITを駆使している。以前は手作業でスケジュールを組んでいたが、クリニックが増えるにつれて限界を感じていた。今は自社内の登録サイトから医師自身が都合の良い場所・時間を選んでもらって調整を図っている。作業を分散できるのがデジタルの良さ。一種のDX(デジタルトランスフォーメーション)になる。

鶴谷 これは現在に限った話ではないが、クリニックチェーンの本格化に向けた場所の手配、人材の確保、そして開院後の医療サービスの品質維持は常に課題としてつきまとう。

 いい場所を最適なタイミングで確保する人材は医療業界ではなく、むしろファミレスチェーン等の店舗開発担当者が望ましい。医療従事者やスタッフにはしっかりとビジョン、ミッションを共有し、我々が考えるスキルセットを持った人材の採用を心がけている。医療サービスの品質維持には能力をフルに発揮してもらう組織づくりと評価体制、迅速な問題改善のスキームが必須になってくる。

 最近開業したクリニックでは、患者からおおよそ高い満足度を頂戴している。徐々にパッケージ化されてきた感触はあるものの最後は必ず人が関わるので、仕組みができたら安心ということではない。緊張感を保つためにも、ITでモニタリングしながらいかに「うっかり」が出ないようにするかも重要だ。

[画像のクリックで別ページへ]

 医療サイドから見た場合はITに強いと思われるかもしれないが、それに甘えるつもりはない。一般的なITベンチャーと比較した際、組織力、開発力、人材力、採用力をトップレベルまで引き上げることが次の段階になる。医療事業には独特のコツがあり、そのコツを押さえると収益も出しやすく、安定したビジネスになりやすい。しかし、通りを挟んだ六本木ヒルズにあるメルカリのように、組織全体のダイアグラムを広げていくことを念頭に置いている。

 何もそれは上場を目的にしたものではない。CAPSグループはあくまでも医療機関が本筋であり、社会的責任は非常に大きい。「5年後はどこにあるか分かりません」「ビジネスモデルをピボットしました」では済まされない。しっかりと長期的なコミットメントを果たしながら、短期的な勢いで戦っている人たちと同じクオリティを出せる――そんな企業体質になることが理想だ。