疾患管理システム「YaDoc」を提供するインテグリティ・ヘルスケア。ICT医療の姿を様々な立場から提言している医師の武藤真祐氏が代表取締役会長を務めることでも知られる。創業当初は、ITを活用した在宅医療が事業の柱だった。その後、“第2の創業”として立ち上げたのがYaDoc。そして2019年に入り、YaDoc自体のサービスのリブランディングを実行した。これらの経緯や今後などを含め、同社を訪問し、代表取締役社長の園田愛氏に話を聞いた。

今回訪問したのは、日本橋(東京都中央区)にある東京サテライトオフィス。歩いて数分の場所に東京本社があるが、こちらは主に来客や打ち合わせスペースとして活用しているという(写真:川島 彩水、以下同)

■起業のきっかけ

自分にとっての「リード・ザ・セルフ」とは何か?

 大学時代は経営学を専攻していたが、卒業後、縁あって病院の経営コンサルタントとしてキャリアをスタートした。当時、介護保険制度の施行(2000年)を間近に控えていた頃で、療養型病床群などが登場し始めた時代。激変する制度に対応するように病院が様変わりをしていく中で地域医療を学んだ。10年もすると構造を知り、問題もよく見えるようになった。「解決する場に立ちたい」と考え事業会社に転職、ヘルスケアビジネスに携わるようになった。

代表取締役社長の園田愛氏

 その中で出会ったのが、武藤(代表取締役会長)だ。NPO法人のヘルスケアリーダーシップ研究会(IHL)を武藤と2008年に立ち上げた。「ヘルスケアに関わる者として、自分の価値観(死生観・医療観)を持ち、強い意志のもと、人々の共感を得ながら、社会の変革と創造を推進することができるリーダーを輩出する」ことをミッションに掲げた研究会で、現在も活動を続けている。

 この活動の軸となっているのが、野田智義氏(NPO法人 アイ・エス・エル 理事長)が提唱するリーダーシップ論。リーダーたらんとする人がたどる段階として、「リード・ザ・セルフ(Lead the Self)」→「リード・ザ・ピープル(Lead the People)」→「リード・ザ・ソサエティ(Lead the Society)」があり、まずは自分自身がやるところから始まり、そこから進んでいくと仲間が集まり、それがやがて群衆となって社会を動かすというもの。

 このリーダーシップ論に基づいて活動を続けていく中で、ふと考えたのが自分にとっての「リード・ザ・セルフ」とは何か?ということ。その問題意識を武藤と話し合った結果、思い切って会社を辞めて独立。インテグリティ・ヘルスケアを設立した。

 会社を設立したのは、2009年10月。当初は、ITを活用した在宅医療を事業の柱としており、翌2010年1月に「祐ホームクリニック」を東京に開業した。

 その矢先に起きたのが、2011年3月の東日本大震災。一カ月後の4月に武藤とともに被災地に赴き、半年後の9月には宮城県石巻市に在宅医療の拠点となる「祐ホームクリニック石巻」を開設した。

インテグリティ・ヘルスケアの概要(表:同社への聞き取りを基にBeyond Healthが作成)

 現地では約3年間、延べ2万人の仲間との地域復興活動を統括し、東京に戻った。この活動では言葉の通り「Surviveした」という実感と、一方で、医療の「無力感」も痛感させられた。生活基盤が崩壊した被災地では、医療だけがあっても救うことができるのはほんの一部でしかなかったからだ。「基盤には『生活』があり、医療は人ぞれぞれのその環境の中で、患者自身が実践するもの」、強烈にそう感じた経験だった。

 東京に戻って程なくして、官民ファンドの地域経済活性化支援機構(REVIC)の子会社であるREVICキャピタルが、こんな声をかけてくれた。「ITによる医療の高度化を、さらに追求してみませんか」、と。

 REVICキャピタルからの出資を受け、2016年にオンラインの疾患管理システム「YaDoc」の開発をスタートした。これが“第2の創業”である。