1滴の尿から高精度でがんを早期発見する――。そんな技術の開発を進めているのが、Craif(クライフ)だ。このほどシリーズA(プロダクトリリースを見越した成長期)の資金調達を実施、同時に社名を従来のIcaria(イカリア)から変更したばかり。同社を訪問し、CEOの小野瀨隆一氏に話を聞いた。

今回訪問したのは、東京・文京区にあるオフィス。手前には卓球台も(写真:川島 彩水、以下同)

起業のきっかけ

つくづくタイミング、人の運に恵まれた

 祖母の大腸がん、祖父の肺がんが1つのきっかけだ。祖父はステージII Aの段階で、ガイドラインであれば手術もしくは放射線治療を施すべきだったが、担当医は何もしないと判断。そこに違和感を覚えた。この体験でがんに対する関心が非常に高まり、がんをテーマに起業したいと考えるようになった。それから、私はイーロン・マスク(米国の著名起業家)が憧れの存在で、人類の進歩に寄与する事業に携わりたいとの思いを強く持っていたことも大きい。

CEOの小野瀨隆一氏

 前職は商社に勤めていたが、具体的な事業イメージがないまま「3カ月後に辞めます」と辞表を出した。その後、がんに関するセカンドオピニオンプラットフォームのアイデアを考案し、独立系ベンチャーキャピタルのANRIを通じて名古屋大学の安井隆雄先生(大学院工学研究科・生命分子工学専攻准教授)を紹介していただいた。すぐに意気投合し、安井先生を技術顧問・共同創業者に迎え、2018年5月に創業した。

 安井先生は弊社のアドバイザーを務めている名古屋大学の馬場嘉信教授とともに、がんの早期発見を工学分野から追究してきた人物。我々の技術も彼らの研究をもとにしている。私は研究畑の人間ではないのでアカデミアの真ん中にいる人が果たしてビジネスに興味があるのかどうかを懸念していたが、それは杞憂だった。

 安井先生自身が事業開発に非常に乗り気で、ビジネス感覚に長けていたからだ。今でも“先生”という距離感ではなく、お互いざっくばらんに話し合える関係を保っている。通常、アカデミアとのマッチングは1〜2年ぐらいかかるそうだが、初めて会ってから2週間ほどですべてが決まった。つくづくタイミング、人の運に恵まれていたと思う。

さまざまなコンテストで受賞している。慶応義塾大学医学部「第3回 健康医療ベンチャー大賞」は、左から3つめ

 起業した2018年には、慶応義塾大学医学部の「第3回 健康医療ベンチャー大賞」の社会人部門で優勝した(関連記事:「尿からがん検知」のIcariaが前回優勝、慶応医学部ベンチャー大賞)。このイベントをきっかけに慶応義塾大学医学部とも親しくなり、数々の共同研究を手がけている。現在進行中の、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)による「先進的医療機器・システム等開発プロジェクト」がその例だ。

Craifの概要(表:同社への聞き取りを基にBeyond Healthが作成)

 2020年6月にはシリーズA(プロダクトリリースを見越した成長期)の資金調達を実施した(関連記事:尿からがん早期発見のIcaria、資金調達と社名変更を実施)。今回は米国ファンドも入っているが、これは創業当初からグローバルで展開することを重要なテーマに掲げているためだ。

 同時に、社名をIcaria(イカリア)からCraif(クライフ)に変更した。Icariaはギリシャの長寿島が由来だが、Craifは、日本の長寿の象徴である鶴(Crane)と人生(Life)をかけ合わせた造語。日本から世界に羽ばたく意味を込めた。