健康意識が高い人は既存のヘルスケアサービスを使う。逆に意識が低い人は面倒くさいので何もやらない。この間を埋めるサービスと位置付けるのが、シルタスが手掛ける栄養管理アプリ「SIRU+」だ。同社を訪問し、代表取締役/CEO・FOUNDERの小原一樹氏に話を聞いた。

今回訪問したのは、東京・六本木にあるオフィス。メゾネットタイプの下階がワーキングスペース(写真)、上階が打ち合わせスペースになっていた(写真:川島 彩水、以下同)

起業のきっかけ

本流のヘルスケアサービスでは怒られている感覚になる

 頑張らなくてもいいヘルスケアサービスを広めたい――それが起業のきっかけだ。私自身、お酒を飲むのが大好きで、ホルモンや唐揚げなどのつまみをついつい食べすぎてしまうタイプ。美味しいものは体に悪いことも多いが、美味しい食事を我慢してまで健康のために何かをやろうという気にはなかなかならない。

代表取締役/CEO・FOUNDERの小原一樹氏

 この生活を続けていれば10年後、20年後に後悔するだろうことはある程度想像が付く。とはいえ本流のヘルスケアサービスでは怒られている感覚になる。私のような食生活を正直に記録すると「お酒の飲みすぎです」「塩分の摂りすぎです」と警告されるのは目に見えている。

 この食生活は自分では分かった上でやっていること。でも、どこかでブレーキは踏みたくなる。そこで自分が能動的に記録しなくても、どんな栄養を摂取しているかを自動的にロギングできるサービスを作ろうと考えた。

 そもそも自分がどんな栄養状態にあるのかを知らないと、最適な食生活を予測できない。納豆でもサバ缶でもいいが、テレビやネットで“体に良い食品”を薦められるとスーパーの店頭から消えることがある。でも、それらは果たして本当に自分が必要としているものなのかどうかを知っている人は少ないだろう。

 食生活は一人ひとりで異なるので、すべての人に当てはまる正解はない。だからこそ、自分の栄養状態を正しく把握して、その状態に対してどんな食品や食材が良いかを自分で選べる環境を提供したいと思った。

シルタスの概要(表:同社への聞き取りを基にBeyond Healthが作成)

 前職はヘルスケアとは無縁の仕事だった。新卒で大学を出て3年間、町工場で特殊な冷凍庫の販売に従事していた。サラリーマン時代に貯めた900万円を元手にシルタスを創業したのが2016年11月。

 プロダクトの完成までに3年近くをかけた。ユーザーに入力させない(手間をかけない)ことを最優先事項とし、自動化したいとの思いが強かったからだ。

 この長い期間を耐えるのに、資金面で協力してくれたのがSBIホールディングス代表の北尾吉孝氏。2018年4月の「第三回日本アントレプレナー大賞」で北尾吉孝賞を受賞して、「この事業面白いね」と1億円の出資を決めていただいた。当時はプロダクトすらなく、会場で北尾氏と話したのはわずか5分ほど。この英断には深く感謝している。

 ファシリティ面でも恵まれた。今のオフィスに移って1年半だが、実はここが初めて自分たちで築いた拠点。当初は農業系スタートアップと共同でオフィスを構え、その後はクックパッドのアクセラレータープログラムに選ばれたのを機に、1年間無償でクックパッド内のオフィスを間借りすることができた。しかもクックパッド社員と同じ待遇で、パソコンを貸与してくれたし、会議室を使え、データも見せてくれた。今でもクックパッドとは仲良くさせてもらっている。