会社のオフィスで野菜を手軽に食べてもらう――。そんなサービス「オフィスでやさい(OFFICE DE YASAI)」を手掛けるのがKOMPEITO(コンペイトウ)だ。昨今の健康経営への注目の高まりにより、社員の福利厚生の一環として同サービス導入(企業)数は順調に増えているという。同社を訪問し、共同創業者の川岸亮造氏に話を聞いた。

今回訪問したのは、東京都渋谷区にあるオフィス。もちろん「置き野菜」用の冷蔵庫が置かれていた(写真:川島 彩水、以下同)

起業のきっかけ

起業時のビジョンは農業と地域の活性化

 私と共同創業者の渡邉(瞬氏、代表取締役CEO)は、日本能率協会コンサルティングという総合コンサルティングファームの出身。製造業を軸に、精密機器や素材系メーカー、研究所などでものづくり現場の改善提案を担当してきた。

川岸氏

 大きくものづくりの視点で捉えた場合、農業もその1つに入ってくる。しかし、農業には従来のコンサルティング手法はなかなかフィットしなかった。そこで“生産者が参加しやすいサービス”を立ち上げようと考え、自分たちで起業した。

 起業時のビジョンとして掲げたのは農業の活性化、そして地域の活性化。当初は「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」のような個人向け宅配のビジネスモデルを模索したが、価格や配送料などの問題から事業としてうまく回すことができなかった。そこで定期的に人が集まる場所に、ある程度まとまった野菜を一気に配送しようと方向転換した。これがオフィスをメインターゲットにした理由だ。

サービスの概要

産地直送のカット野菜をオフィスに届ける

 「オフィスでやさい(OFFICE DE YASAI)」はオフィスに冷蔵庫を常設し、新鮮な産地直送のカット野菜や季節ごとのフルーツ、ジュースといった地方の6次産品を週2回から届ける。もう1つ、月ごとにメニューが変わる30種のおかずとごはんを配送する「オフィスでごはん(OFFICE DE GOHAN)」も運営している。1個100円〜と手頃な価格なのも特徴だ。

KOMPEITOの概要。2019年8月に代表取締役が川岸氏から渡邉氏に変更となった(表:同社への聞き取りを基にBeyond Healthが作成)

 活動初期、ある経営者から「社員にその場で野菜を食べさせたい」とのリクエストをいただいた。社員があまり健康的な食事をしていないため、手軽にオフィスで食べられるように野菜を提供してもらえないかと。その点を考慮し、都度のデリバリー方式と冷蔵庫据え置きの方式を検証しながら今の形に落ち着いた。

 反応は「野菜を会社で食べられるのは素晴らしい」といったものが多く、開始してから5年が経過した現在でも新規導入の顧客から同様の反応を得ている。もちろん健康や福利厚生手段ではあるが、まずは野菜を食べることを習慣化するのが大事だと考えている。

オフィスの冷蔵庫に届ける商品の一例

 初めはベンチャー企業、外資系企業を中心に話題となった。しかし最近はいろんな業種から気にかけていただいている。地場の中小企業からも問い合わせがあるし、大企業の支店や部署単位で導入する場合もある。規模としては100人前後の企業がボリュームゾーンだ。

サービスの現状と課題

有利なのは「野菜を食べる=健康に良い」という共通認識

 この4月で、OFFICE DE YASAIの開始からちょうど5年が経過した。昨今は健康経営を掲げる企業が多いため問い合わせがかなり増えており、導入数も順調に伸びている。“健康経営と言えばOFFICE DE YASAI”とイメージづけるために、ライザップやエデンレッドなどと連携したセミナー開催や情報発信も行ってきた。

 我々が有利なのは、すでに「野菜を食べること=健康に良い」と皆さんが理解している点。これははっきりしている。今さら声高に主張しなくても社会的な共通認識がある。だから企業には健康経営をアピールしやすい。社員も「健康のことを考えてくれているんだ」と納得する。これが完全栄養食やサプリメントだと改めて効果を説明しなくてはならず、どれだけ健康に寄与するのかが伝わりにくくなる。

 ただし課題もある。なぜなら、健康経営のムーブメントがこの先ずっと続くものではないからだ。社員の健康を気遣った一時的な福利厚生の位置づけだと、景気が悪くなったら見直そうという話になってしまう。

 だからこそ我々は、企業にとってOFFICE DE YASAIをなくてはならない存在までブラッシュアップすることを目指す。今はまだプラス1品の要素が強い。これをきっかけに野菜の摂取をルーティン化して健康の意識を高め、「オフィスで野菜を食べること」が普通になってほしい。

 例えば健康のために産業医と契約する、それと同じレベルで社員の健康を維持する手段としてOFFICE DE YASAIを導入する――そこまで普及すれば、企業にとって不可欠な要素になってくる。そんな存在になりたい。

自社の強み

生産者も意識が変わりつつある

 確固たる物流網を作れているのが一番の強み。サラダなどの生鮮食品は摂氏10度以下で流通させなくてはならない。いろんな野菜を仕分けして10度以下でラストワンマイルまで届けられる業者はほとんどいない。ゼロからこれをスタートしようとすると、配送手段だったり、野菜のカット工場だったりを含めてある程度のスケールがないとそもそも対応できない。我々は壁をすでに乗り越えている。その点は高い参入障壁になっていると思う。

 さらに株主にはキユーピーがいて、工場や冷蔵で物流するためのノウハウなどで多大な協力を得ている。キユーピーとはかなり早い時期から資本提携しており、良好な関係を築いてきた。

 農家との契約についても強化を図っている。当初は契約農家も少なく、自然災害などで安定供給が難しい面もあった。しかし今は個別の農家に加えて、農業総合研究所など優れた農家を取りまとめている事業者と一緒に仕事をしている。これにより、安定供給を確保できるようになった。

 徐々に生産者も意識が変わりつつある。農業人口は高齢化しているし、新たなチャレンジに積極的というわけでもないが、新規就農者や若い後継者が新しい販路の開拓を探り始めた。この時流に乗ればさらに拡大できるのではないか。

今後の展望

他の食品やサービスとの相乗りも視野

 まずは提供エリアを拡大していく。今は東京圏が中心だが、その他の都市部エリアへの拡大に注力する。そして企業にとってなくてはならない存在になるために、より社員の健康に寄与するための周辺事業の展開や、強みである物流を生かした事業の組み合わせなどを考えている。

 組み合わせとは例えば、他の食品やサービスとの相乗りだ。野菜も完璧ではないので、できる部分もあればできない部分もある。そうしたできない部分を他の食品で栄養補給できれば、より満足度が高まるだろう。ただこれはアイデアレベルであり、何かが具体化しているわけではない。

 より現実的には、「家でも新鮮な野菜を食べたい」というニーズに対して、オフィスから野菜の配送を申し込めるようになることが考えられる。オフィスに導入済みなら安く買えるなどの特典もあるだろう。こうして広がっていけば、やがては我々のビジョンである農業の活性化、地域活性化にもつながってくる。これまで野菜を日常的に食べなかった人たちがある一定量を食べるようになり、結果的に野菜消費量が向上するからだ。


(タイトル部のImage:川島 彩水)