感情を記録してAIロボと会話することで、自身の感情を向き合う――。emol(エモル)が手掛けているのは、そんなアプリだ。ユーザーは女性が8割弱。年齢層は18歳から24歳、いわゆる「Z世代」が多く利用している特徴がある。同社を訪問し、CEOの千頭沙織氏に話を聞いた。

今回訪問したのは、emolが拠点を構える京都リサーチパーク(写真:川島 彩水、以下同)
今回訪問したのは、emolが拠点を構える京都リサーチパーク(写真:川島 彩水、以下同)
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起業のきっかけ

私自身よりも心に刺さっている人が多くて驚いた

 大学3年生のとき、私自身がメンタルを崩した経験がある。学校に通うことさえ辛く、人前に出ることが苦手になり、就活が始まっても上手く対応できなかった。面接でも緊張しすぎて、頭が真っ白で冷や汗もかいてしまうような感覚に陥り、就職に失敗してしまった。

CEOの千頭沙織氏
CEOの千頭沙織氏
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 私は美大の出身。就職に失敗してゼミの教授に相談をしたところ、「先輩には起業したり、アーティスト活動を続けたりする人たちもいる。必ずしも就職にこだわる必要はないのではないか」とアドバイスを受けた。それなら、新しいものを作るという自分の得意な部分を生かして起業しようと考えたのが大学4年生の秋頃。とはいえ、ゼロの状態では難しい。そこで必要なスキルを身につけるため、卒業後に派遣社員のITエンジニアとして1年弱ぐらい働いた。

 スキルを習得しながら、プライベートでは自分の作りたいサービスをテストし、1年後には1社目となるオリジナルTシャツのプリントサービスを始めた。しかし、フタを開けてみればユーザーがほとんどいないような状態で、1年を待たずにクローズした。

 その後は4年間、アプリ開発、Webサイトのデザインや開発を外部から受託してがむしゃらに働いた。現在のCOOである武川(大輝氏)とは夫婦であり、高校、大学もともに過ごした同志だが、彼がデザインを手がけ、私がプログラムをこなす分業制にした。そのうちに実力も伴ってきて、再び自社サービスを作りたいとの思いが生まれた。今度は完全に自分をターゲットにして、自分がほしいサービスを作ろうと思った。

 メンタル不調になって以来、私は人と話すことが苦手な状態が続いていた。それに、SNSで常時誰かとつながっている風潮もしんどいなと感じていた。ならばAIを相手に、「人とは一切つながらないアプリがほしい」との思いから着想したのが、emol(エモル)になる。リリースしてみると予想以上に反響が大きく「私と同じような人が世の中にはたくさんいるんだ」と思い、2社目となる今の会社を立ち上げた。

emolの概要(表:同社への聞き取りを基にBeyond Healthが作成)
emolの概要(表:同社への聞き取りを基にBeyond Healthが作成)
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 正直、私自身よりも心に刺さっている人が多くて驚いた。みんな、他人に悩みを吐露したい気持ちはあるが、一方で「嫌な顔をされたらどうしよう」「秘密を漏らされたらどうしよう」といった怖さがある。よく「女性は相手に結論を求めているのではなく、話を聞いてほしいのだ」と言われるが、そのアプローチに近い。誰にも言えないような悩みをAIに吐き出すだけでも心が軽くなるのだろう。