創業以来取り組んできた医療機関向けサービス「AI問診ユビー」で知られるUbie(ユビー)。今年に入り、4月には生活者向けサービス「AI受診相談ユビー」をローンチ。さらに10月には、本格的なグローバル展開への一歩としてシンガポール進出を発表したばかり。同社を訪問し、共同代表取締役/医師の阿部吉倫氏に話を聞いた。

今回訪問したのは、東京・日本橋にあるオフィス(写真:川島 彩水、以下同)

起業のきっかけ

シーズとニーズが合致しサービスが明確化

 起業には2つの理由がある。1つは大学病院で働いている際、カルテ記載業務などの事務作業に膨大な時間が取られていたこと。患者とじっくり向き合える時間がごく一部しかなく、医師の長時間労働が改善される兆しもない。まずはその状況を改善したいと思っていた。

共同代表取締役/医師の阿部吉倫氏

 もう1つは、患者の来院タイミングが最適ではないと感じたこと。もっと早く来ていれば治療の選択肢がたくさんあった患者を数多く目にしてきた。例えば2年前から背中に痛みを感じていたのに、仕事が忙しくて病院に来られなかったために悪性腫瘍の骨髄炎を患っているケースもあった。そうなると治療の選択肢が極めて少なくなってしまう。これは患者にとって判断する情報が乏しいからだ。

 そこで病院内と病院外の2つの課題を解決したいと考えた。目的は病気の早期発見・早期受診・早期治療。「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」ことをミッションとし、AI自動問診サービスを手がけることにした。

 そのAI自動問診の基になるエンジンには、2013年から取り組み始めた。共同代表であるエンジニアの久保(恒太氏)が東大大学院で病気推測の研究をしており、当時、東大医学部に在籍中だった私に協力を求めてきたのがきっかけだ。久保はもともと高校の同級生で、今後の社会に資するテーマとして“医療と工学の融合”の構想を持っていた。

Ubieの概要(表:同社への聞き取りを基にBeyond Healthが作成)

 そして2017年、ちょうど私が初期研修を終える頃にある程度の形になった。つまり技術シーズが先にあり、そこに私が解決したい医療現場の2つのニーズが合致してサービスの解像度が高まったことになる。このAI自動問診エンジンを活用したいとの思いから2017年5月にUbie(ユビー)を共同創業した。

 将来は研究医になるつもりでいたので、正直なところ、起業など考えもしなかった。しかし、いざサービスの原型が見えてくると、「我々の使命はこの技術シーズを社会実装していくことなのではないか」と思えるようになった。会社を興そうと思ったのは、創業のわずか4カ月前。社会実装の方法論が鮮明に見えていたわけではないが、“世の中に必要なもの”との強い確信を持っていたのは事実だ。