1~2週間を要していたゲノム変異の解釈が…

 東大医科研も、同じような状況だった。患者から検体を受理し、次世代シーケンサーでシーケンスしてスパコンによる解析ですべての変異を暴く。それを研究者と医師が「一粒、一粒、情報検索して検討した後、担当医に渡して治療方針を立てていた。これが時間的にも労力としても大きなボトルネックだった」(宮野氏)。

 これを解消するために東大医科研が導入したのが、IBMのAI「Watson for Genomics」である。「Watsonは機械学習と自然言語処理にサポートされて、論文などをよく読み、ある程度理解し、適当に推論する」(同氏)。導入時は2000万件超の文献要旨、1500万件超の特許データ、COSMICなどを学習してスタートした。

 これにより、人手で行っていたときは1~2週間を要していたゲノム変異の解釈が、2分程度で完了するようになったという。さらに、「全ゲノムシーケンスに基づき、3日と7時間30分で、患者の同意取得から診断として返すことが可能になった」(宮野氏)。

 AIは、Artificial Intelligenceの略。これに対して宮野氏は、「Watson for Genomicsを使ってみて感じたことは、AIとは『人知の増強』。つまり、Augmented IntelligenceのAIと表現するのが適切だろう」と述べる。一方、急性リンパ性白血病患者で極めて希少な融合遺伝子が見つかった症例でWatsonが何も提示できなかったケースを挙げ、「データがなければ、AIは完全無能。まだまだ発展途上である」(同氏)と結んだ。

(タイトル部のImage:森田 直希)