専門医でなくても認知症の重症度を総合的に評価でき、治療やリハビリなどが効果的だったか時系列変化でとらえることができる──。そんな認知症評価スケールの臨床研究が進められている。

 香川大学 医学部精神神経医学講座 教授の中村祐氏が開発し、神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センターが研究支援してきた「ABC認知症スケール」である。

 このスケールは、認知症の症状として現れる「認知機能障害」「徘徊や睡眠障害などの行動・心理症状(BPSD)の出現」「日常生活動作(ADL)の低下」といった3つを総合的に評価できる。かつ、これらの経時的な変化の評価が可能である。

 従来、認知症のスクリーニング検査としては、長谷川式認知症スケール(HDS-R)やミニメンタルステート検査(MMSE)が広く使われている。これらは主に見当識、記憶力、計算力、言語的能力など認知機能を評価する検査である。ADLやBPSDを評価するスケールは欧米で開発された様々なものが存在するが、専門医や訓練を受けた医療従事者でないと総合的に評価するのが難しく、検査にも時間がかかるという。

 それに対してABC認知症スケールは、患者本人でなく介護者に対して13項目の質問を9段階で回答してもらう簡便なもので、約10分程度で実施できる。「評価者への特別な訓練や資格がなくても実施できる。看護師や介護職なども評価者になれる。実際、介護福祉士なども自分たちのケアがうまくいっているのか評価したいと、介護施設からの引き合いも多い」(学術展示会場で説明にあたった神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センターの菊池隆氏)。

 現時点では、質問ブックやスコア集計シートなどすべて紙のツールだが、今後はアプリ化を計画している。なお、主に認知症のスクリーニングとして用いられる簡便な評価スケールが2018年度の診療報酬改定で算定できるようになったことを受け、ABC認知症スケールも次期診療報酬改定での保険適用に向け準備しているという。

ABC認知症スケールを説明する神戸医療産業都市推進機構の菊池氏(写真:森田 直希)

(タイトル部のImage:森田 直希)