2020年10月12日付Editor's Noteで、書籍を制作中であると紹介させていただきました。本のタイトルは、『100年ライフのサイエンス』。昨年末、無事発行されました。本格的な人生100年時代を前にして、誰もが知っておきたいエイジング研究の最前線と、科学的アプローチによる健康寿命延伸のメソッドを紹介しています。

 タイトルを聞き、こう思う人もいるかもしれません。「人生100年時代というけれど、本当にそんな時代が来るのだろうか?」。この言葉が使われるきっかけとなったのは、英国の学者、リンダ・グラットン氏らによって書かれた書籍『ライフ・シフト』が世界的なベストセラーになったことで、邦訳の発行は2016年。以来、世の中のあらゆるシーンでこの“冠“が付けられるようになりましたが、使い勝手の良さやマーケティング先行による頻出に、ある種の“怪しさ”を感じる人も多いようで、かく言う私もその1人でした。

 しかし、取材を進めるに従い強くなったのは、「100年ライフは身近で、まさに私たち自身が迎える時代ではないか」ということ。「2050年に日本の100歳人口が50万人を超えるという推計に違和感はない」「2050年には、90歳くらいまでの健康長寿はかなり自然に達成できるかもしれない」。お話を伺った医師や研究者の多くが“100年”に肯定的であったことが、そう思うようになった理由の1つです。

 その根拠としてとりわけ興味深いのが、日本人高齢者は体力的に若返っているという事実です。2017年の85歳以上の歩く速さは、男性が1992年の75歳に相当、女性は65歳相当になっているというデータがあり、この25年間で、日本人は男性は10歳、女性は20歳ほど若返っていると見ることができると言います。こうした傾向は、健康状態や知的能力においても見られるトレンドで、「10年前と比べも、総じて5~10歳若返っている」と話す専門家もいました。

 100年ライフが現実になると、新たな課題も生まれます。健康寿命の延伸です。長寿を幸福につなげるためには「元気に老いる」ことが条件で、その羅針盤となることを目指したのが『100年ライフのサイエンス』です。長年、老年医療に携わってきた日本老年医学会前理事長、大阪大学の樂木宏実先生をはじめ、「先制医療」の提案者である日本学士院長の井村裕夫先生や、老化細胞研究で世界から注目されている大阪大学の原英二先生など第一級のエイジング研究者から社会実装を目指す起業家までを取材し、現代老化研究の成果を網羅した本書は、個人の健康長寿だけでなく、ヘルスケアビジネスを展望する本としても役立ちます。

(タイトル部のImage:arkgarden -stock.adobe.com)




『100年ライフのサイエンス』 発売中です!

老化はこうして制御する「100年ライフ」のサイエンス
監修:樂木宏実