Beyond Healthではこれまで数回にわたって再製造SUDに関する話題を取り上げてきました(関連記事:「再製造SUD、国内第一号が承認」「日本にも来る? デバイス・ジェネリック革命」)。再製造SUDとは、1回の使用で廃棄するよう設計・製造された単回使用医療機器(single-use device:SUD)を製造販売業者が適切に収集し、分解・洗浄・部品交換・滅菌などして再使用できるようにした医療機器のことです。

 ディスポーザブル(使い捨て)医療機器とも呼ばれるSUDは、感染防止や洗浄・滅菌などの業務省力化を目的に開発され、今やマスクや手袋、注射針・注射器、輸液バッグのほどんどがSUDです。ただ、SUDの中には高価で構造がしっかりしているものもあり、かつて多くの医療機関でSUDを独自に洗浄・滅菌して再使用していたといいます。

 しかし、SUDの院内洗浄・滅菌による再使用は不完全な処理に伴う感染リスクに加え、医療機器の性能・安全性を保証できないため、2000年にFDA(米食品医薬品局)が原則禁止したのを契機に、行うべきでないことが世界の共通認識となっています。その代わりに、各国規制当局が認めたのがSUDの再製造品というわけです。欧米諸国の医療機関では再製造品の使用が一般化しており、例えばドイツでは、大学病院の95%が再製造SUDを使用しているそうです(武藤正樹、医機学 2018;88:630-6.)。米国での再製造SUDの市場規模は、2017年時点で約3億ドル(約330億円)と推計されています。

 一方、我が国でのSUD再使用禁止の動きは大きく遅れをとっているのが実情です。既報通り、再製造SUDが制度化されたのは2017年で、昨年8月にようやく再製造SUD第一号が承認されたばかり。厚生労働省も手をこまぬいているわけではなく、再三にわたってSUDを再使用してはならない旨の通知を発出しています。ただ罰則規定がないことなどから、国内ではいまだにSUDを院内で独自に洗浄、滅菌処理して再利用している医療機関が少なくありません。

 2015年に神戸大学病院で神経生理電極(EP)カーテルの不正な再使用、2017年には大阪市立大学病院での骨に使われるドリルの不正な再利用などの事例が報道され、再製造SUDの制度化のきっかけになったわけですが、その後も「医療用ホチキスを使い回し、北海道・小樽市立病院」(産経ニュース 2018年5月23日)、「使い捨て医療機器使用 徳島市民病院、2017年度175件」(徳島新聞 2018年3月30日)といった報道がなされています(いずれの事例も自主的な院内調査で健康被害は認められず、当該機器の再使用を禁止したとのことです。当院における単回使用機器の不適切な使用について[2018年4月11日]単回使用医療機器の不適切使用に関わる調査結果について[2018年10月3日])。

 このSUD再使用の実態って、報道されなければ、健康被害が認められなければ、経営上やむを得なければ、放置していてよい問題なのでしょうか。