口腔ケアに広がるIoT、在宅健康管理につながるか

 この製品は、まず開発中であることが2014年12月に発表され、私はセンサーや通信機能が歯ブラシのような日用品にも搭載されるというHome IoT的な観点から注目していた。同製品を2016年4月に発売して以降、サンスターは他社製品やサービスとの連携を進めている。具体的には、富士通の歯科医院向けクラウドサービスとの連携や、米Amazon.comの自動再注文サービス対応、シャープのモバイル型ロボット「ロボホン」に向けた連動アプリ、大阪府の健康づくり支援プラットフォーム整備等事業「おおさか健活マイレージ アスマイル」モデル実施への参画などに取り組んでいる。

サンスターグループ オーラルケアカンパニーと富士通による先進予防歯科サービスの概要(出所:サンスターグループ プレスリリース)

 口腔ケアのIoT化はテック系スタートアップに加えて、いわゆる国内大手企業も積極的に取り組んでいる。例えば、ライオンはスマホで撮影した舌の画像から口臭リスクを提示する「口臭ケアサポートアプリ」を2018年に開発し、その技術を活用して笑顔と口臭リスクをチェック、サポートするWebコンテンツ「NONIO MIRROR」を開発、2019年3月に公開した。また、2020年9月には子供向けのIoT歯ブラシ「クリニカKid's はみがきのおけいこ」について、テストマーケティングとしての販売を開始している。

ライオンの子供向けIoT歯ブラシ「クリニカKid's はみがきのおけいこ」(出所:ライオン プレスリリース)

 従来できなかったデータ化を実現することで、プロによる対面の個別指導が必要だったものをあるレベルまでは機械で代替したり、プロによる管理を機械で補助・支援することで対応できる対象人数を大幅に増やしたりできる。口腔ケア分野のIoT化が進みつつあるのは、こうした利点が一般に受け入れられるようになりつつあるということだと思う。私自身、自分では教えられなかった歯磨きをIoTガジェットとアプリが息子に教えてくれるという体験を通じ、「親が頑張るのもいいけれど、頼れるものは機器に頼ってもいいな」と感じた。

 新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、神奈川県は自宅療養者に対して行政が行なっていた体調チェックを療養者自身が24時間行うようにすると発表している(2021年1月19日時点)。リソースの関係上やむを得ない判断なのだろうが、単身の療養者などの体調が急変した場合には対応が困難だろうと予測される。こうした場合に、療養者のなにがしかの生体情報を自動で行政へ報告・集計してくれるシステムがあれば、行政にとっても療養者にとってもプラスになるのではないだろうか。

 平時であれ緊急時であれ、在宅健康管理におけるIoT機器の活用は静かに浸透していきそうだ。今後も注目していきたい。ちなみに息子によれば、歯磨きは“やらなくちゃ”いけないものから“やりたい”ものへ変わったのではなく、モンスターを見つけなければならない、ゲームはクリアしなければならないという、新たな“やらなくちゃ”いけないものになっただけだそうだ。

(出所:サンスターグループ プレスリリース)

(タイトル部のImage:arkgarden -stock.adobe.com)