毎年1月上旬にラスベガスで行われるテクノロジーイベント「CES」は、新型コロナウイルスの世界的感染拡大(COVID-19)を受け、初のオンライン開催となった。トヨタ自動車など常連企業の一部が出展を見合わせ、出展社数は前年の半数以下になったものの、米自動車ビッグスリーの一角であるゼネラルモーターズ(GM)や米大手通信事業者Verizon、米流通大手ウォールマートのトップらが連日登壇、新商品・サービスの発表なども相次ぎ、世界中の注目が集まることに変わりがないように見えた。

 今年のCES2021の主役の1つは、間違いなくヘルスケア領域だった。過去数年もヘルスケア関連の出展は多かったが、今回は主催者が今年注目のトレンドの1つとして真っ先に取り上げた。

 ヘルスケア領域の具体的なテーマとして、日常の生活状態の把握やオンラインの患者ケアが挙がった。リストバンド型のセンサーを身に着けるなどして活動量やバイタルデータを取得して解析、その結果をオンライン経由でかかりつけ医と共有して適切なアドバイスを受ける、といった用途が想定されている。ヘルスケアモニタリング端末の売り上げは、米国において2020年に前年比73%増となり、今後も2024年まで2桁成長が続くと予想されている。

 その代表は、CESで報道機関向けの発表会を初めて行ったオムロンだ。オムロンは2年前のCES2019でリストバンド型の携帯血圧計「HeartGuide」を披露、今回は医師向けの遠隔患者モニタリングシステム「VitalSight」を紹介した。COVID-19の影響によって、高血圧症をはじめとする慢性疾患患者が通院しにくい状況が続いている。オムロンによると「心臓発作による死亡率が、COVID-19期間中に2倍になった」という。VitalSightは、その予防策として、自宅にいる患者が、日々の血圧値などの健康データを医師と共有する仕組みとして使われている。

 ヘルスケア領域にデジタル技術がますます浸透することは間違いないが、社会実装には懸念もある。医療行為には、医師の倫理観に依存する場面があるが、医療支援に何らかの技術が関与するなら、開発者の意図がそこに入り込む可能性があるからだ。

 例えば、主催者が将来にわたって注目する技術の1つとして、病院や災害時の支援ロボットである「ロボット・トリアージ・ヘルパー」があったが、その実現においては開発者の倫理観が問われることがありそうだ。というのも、大量の患者がいたときに怪我や病気の深刻度に応じて手当ての優先度を決めるトリアージには、「命の選別」の要素があり、誰が判断したとしても「どのような基準で選んだのか、選ばなかったのか」という疑念がつきまとう。トリアージのような繊細なテーマを扱う機器開発を手掛ける技術者やメーカーには、高い倫理観と、そして多くの人が納得できる説明が求められることになるだろう。

 例えば、独ボッシュは、AI技術者を育成し、雇用する一連のプログラムを紹介する一方で、AI倫理規範を設けたことを記者会見で紹介していた。AIに関する倫理をめぐっては、こうした取り組みが、今後増えるのではないかと感じたCES2021だった。

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