女性従業員の月経困難や不妊、更年期など女性特有の健康課題が企業経営に大きな影響を与えることが知られるようになるにつれ、この問題に手を打たなくては、と考える企業が増えてきている。ただ、多くの企業は、具体的に何をしたらいいのか模索中の様子。そこで、長年、女性の健康や医療の分野を取材してきた経験から、今後、導入・実施する企業が増えてほしいと願う施策例をいくつか紹介したい。

 企業が検討すべきポイントは、大きく「教育・研修」「相談先の設置」「検診・治療の費用支援」の3つではないかと思う。

 「教育・研修」に関しては、そもそも日本では、学校教育で女性特有の健康課題について教わることがないため、女性の生理の仕組みやそこから起こる女性特有の病気やその対処法に関して、男性だけでなく当の女性自身もよく知らない場合が多い。どんな症状は対処すべきか、どんな対策があるのかなど、起こり得る体の変化について、婦人科医などの専門家による研修やEラーニングなどで、基礎的な知識を学ぶ場を作ることは大切だ。知識に加え、そうした問題を抱える人とのコミュニケーション方法についても、男性も女性も考える機会を設けることは有意義と言える。

 2つ目の「相談先の設置」は、女性特有の不調やそれにまつわる不安を抱える社員が気軽に相談できる窓口をどう作るかだ。女性の体の専門家といえば婦人科医だが、残念ながら日本では妊娠以外で女性が体調の不安を婦人科に相談に行く習慣がそれほど定着しておらず、ハードルが高くて受診をためらう人が少なくない。そもそも相談できる婦人科がどこにあるのか分からないケースも多い。そこで、会社の産業医の1人に婦人科医を登用したり、必要なときに電話やネットで相談できるような提携婦人科医と契約する、地域の産婦人科の連絡先や情報を提供する、などの工夫があれば、心配を感じた女性従業員は素早く受診しやすくなるだろう。

 相談窓口は医師に限る必要もない。女性の健康課題に知識のある保健師や看護師に就いてもらって話の内容によって婦人科への受診を勧奨する方法もある。

 目新しいところでは、助産師が社員の相談を聞く「顧問助産師」というサービス活用する企業もある。法人向けに「顧問助産師」のサービスを開始したのは、スタートアップのWith Midwife(ウイズ・ミッドワイフ、大阪市、代表取締役:岸畑聖月氏)。契約企業の社員が24時間、いつでも電話やネットで相談できるようにし、必要に応じて直接対面で相談を受けることもある。

 助産師は看護師の上級職とされ、性教育、妊娠出産、育児、更年期などの悩みに寄り添うことができる国家資格を持つ専門職。「助産師は看護師の資格も持っており、妊娠や出産の専門家であるばかりか、育児の相談にも乗れるプロ。直接医師に相談するにはハードルが高いと感じるような内容でも、助産師なら気軽に話せるのではないか」と岸畑さんは話す。すでに約10社がこの顧問助産師制度を導入している。

 昨年12月に「顧問助産師」制度を導入したタカラベルモントでは、「女性だけでなく、男性からの相談も寄せられている」(同社広報室)という。相談をしたある女性管理職は「不妊治療の相談をした。だれに話していいのかわからない心のもやもやをずっと抱えていたが、聞いてもらえたうえ、専門家としてのアドバイスもいただけ、気持ちがすっと軽くなった。寄り添ってもらえることで、こんなにも自分が楽になるとは思わなかった」と窓口の設置を歓迎する。

 3つ目の「検診・治療の費用支援」では、例えば女性特有の検診項目を会社の健康診断に加える方法がある。ロート製薬は、婦人科検診や「隠れ貧血」の指標となる「フェリチン」の血液検査費用を、全額会社が負担する。

 貧血は生理のある女性(50歳以下)の約5人に1人が抱える不調で、疲れやすい、集中力が落ちる、うつ気分になるなどの不定愁訴につながるばかりか、妊娠した際には胎児の発育にも大きな影響を与える。しかし、通常の健康診断の項目には含まれていないことが多い。

 ロート製薬は専門家を招いて女性特有の健康問題の社員研修を行うとともに、早期発見のための具体的な検診行動を経済面からも促す施策で、女性従業員の健康向上と妊活をサポートしている。

 一方、毎月の生理痛に悩む女性に着目して、「オンライン診療を活用した婦人科受診と低用量ピル服薬の支援プログラム」を開始したのがエムティーアイ。提携する医療機関のオンライン受診(初診は対面受診)システムを使い、女性社員の婦人科の受診を促すとともに、生理痛などのトラブル対策で低用量ピルが処方された場合は、その薬代も会社が負担する制度だ。費用は社員が会社で経費精算する仕組みで、低用量ピルは郵送される。

 月経痛やPMSなどの月経トラブルは、働く女性のうち、半数以上が仕事に支障をきたすと感じている。生産性の低下が指摘されるだけでなく、放置すると、子宮内膜症になったり、不妊になったりと、病気のリスクが上がる。だが、症状に悩むにもかかわらず治療を受けていない人が多いことが問題だ。一方、低用量ピルの服用が月経随伴症状を軽減し、女性のQOLが改善することも分かっており、受診を促し、必要な人の治療介入を早めることは、個人にとっても企業にとっても大きなメリットになる。同社はこの点に着目したわけだ。