取り囲む女子から発せられる、控えめとは言えども黄色い声──先日、取材としては珍しい光景に出くわしました。オンラインフィットネスなどに向けたスマートミラー「MIRROR FIT.」の先行販売に関する発表会でのことです(関連記事:一般向けスマートミラー市場に挑む、ミラーフィット

 というのも、同製品を開発したミラーフィットの代表取締役社長の黄 皓氏は、Amazonプライム・ビデオのオリジナル番組『バチェラー・ジャパン』シーズン4(2021年11月配信開始)に出演する4代目バチェラーその人。今回の発表会は先行販売を実施する「Makuake」の東京本社で行われたのですが、同時にオンライン配信もあったためにリアル会場を訪れるメディア関係者はそれほど多くなく、同社社員のバチェラーファンと思しき方々も加わって黄氏の一挙手一投足を見守っていたのです。

スマートミラー「MIRROR FIT.」の先行販売に関する発表会で登壇した、ミラーフィットの代表取締役社長の黄 皓氏。筆者が参加する通常の発表会に比べると会場における女性比率が高く、なんとなくいつもとは違った雰囲気(撮影:日経BP)
スマートミラー「MIRROR FIT.」の先行販売に関する発表会で登壇した、ミラーフィットの代表取締役社長の黄 皓氏。筆者が参加する通常の発表会に比べると会場における女性比率が高く、なんとなくいつもとは違った雰囲気(撮影:日経BP)
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 あいにく筆者は同番組を見たことはなく、調べてしまいました。同番組は「成功を収めた1人の独身男性=バチェラーのたった一人のパートナーの座を勝ち取るべく、性格もバックグラウンドも異なる複数名の女性たちが競い合う『婚活サバイバル番組』」(アマゾンジャパンのプレスリリース)とのこと。黄氏が出演したシーズン4も大いに盛り上がったようで、レビューや関連ブログにはファンの熱いコメントがぎっしり。生で黄氏に会える機会があればファンが盛り上がるのも当然、ということがよく分かりました。

 ところで、筆者の若かりし頃(2000年前後)と言えば、「ヒルズ族」に代表されるような「イケてる実業家=ITベンチャーor投資ファンド」の時代。それから四半世紀が経とうというのに、今もモテる男性といえばやはりITベンチャー社長ということなのでしょうか。

 黄氏のプロフィールを見ると、必ずしもそういうわけではないようです。黄氏は大学卒業後に大手商社にて勤務、メキシコ駐在などを経て2016年に退職し、家業の貿易会社代表に就いたという華々しい経歴を持っています。加えて同じく2016年にサブスク型パーソナルジム・エステを運営する会社を設立。自身も鍛えられた肉体美でファンを魅了しています。この段階で既に「イケてる実業家」だと思いますが(実際、この段階で『バチェラー・ジャパン』シリーズの男女逆転版とされる『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン1に “高スペック実業家”な男性候補者として出演し、人気を博しました)、「ITベンチャー社長」ではありません。

 黄氏がIT領域でのビジネスに着手したのは、まさに今回の「MIRROR FIT.」が初めて。2020年7月にミラーフィットを設立し、2021年2月には第一世代世代品を完成させ、一般消費者へのテスト販売、ホテルや不動産関連などの法人への導入を進めてきました。そして、「スマートミラーデバイスを活用したオンラインフィットネスサービスを提供する会社を含めた3社の代表を務める青年実業家」という華麗な肩書で、4代目バチェラーとして番組に出演したというわけです。

 ではなぜ貿易やジム・エステといった領域から、IT領域へとビジネスを展開したのでしょうか。黄氏自身は“必然だった”と位置付けているようです。

 「有名であっても一般人である自分は、いわゆる芸能人と何が違うのか…“共感力が高い点”だと考えています。一般人である自分には、たくさんの人が気軽にDM(ダイレクトメッセージ)をくれる。だから、皆の声を吸い上げやすい。特に私はジムの事業をやっていることもあって、運動できないといった悩みを寄せてくれますし、私自身の挫折などを話すと皆がそれに共感してくれます。つまり、私は皆に共感できるし、皆からも共感されやすい立場にある。

 そして、こうして拾った皆の声に応えるためにも、テクノロジー、ITが必要なんです。例えば運営しているジムについて『この地域には出店されないんですか』という声が寄せられることもあります。ネットを利用すれば、目の前にいる人だけでなく皆の思いをかなえられる。だから今はMIRROR FIT.がベストの形だと考えています」(黄氏)

 「インターネットの普及などにより、情報発信は双方向になった」とよく言いますが、ユーザーの声を聞くのもネットで、ユーザーの声に応える実サービスもネットで、といったところでしょうか。確かに、顔が見えない企業よりも、顔が見える「モテる人」の方がユーザーの声を集めやすいように思えます。ある分野での成功者として有名になると、SNSなどの双方向コミュニケーションを通じて関連するユーザーの声がどんどん集まるようになり、その声を総合的に分析することで潜在ニーズをつかんで新しいサービスや製品を作り出すことができ、さらにそのサービス・製品もネットを活用することでより多くの人に届けられる──そんな流れが想像できます。

 とすると、以前は「ITベンチャー社長(=成功者)だからモテる」という図式だったものが、今や「モテる(=ある分野での成功者=ユーザーの声が集まる)からITベンチャーを起業」という図式へ変化しているのかもしれません。今後は新規事業創出の視点からも「イケてる実業家」を要チェックしたいと思います。

(タイトル部のImage:arkgarden -stock.adobe.com)