2020年はコロナ禍のため、オリンピックを始め様々な国際的イベントや会議が延期、または中止に追い込まれた。そんな延期されたイベントの一つに、世界遺産登録の可否を決めるユネスコの世界遺産委員会がある。どうやら、今年の6〜7月に世界遺産委員会を開いて20年、21年の2年分の登録審査をまとめて行うことが決まったようなので、日本が登録を目指す世界遺産候補をおさらいしてみよう。

 20年の日本は、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(通称はたぶん、奄美・沖縄になりそう)の自然遺産への登録を目指していた。琉球列島に属するこの4島は、いずれも、美しい海で知られているが、今回、世界遺産として価値が認められたのは、奄美大島のアマミノクロウサギ、沖縄島のヤンバルクイナ、西表島のイリオモテヤマネコに代表される森の生態系。かつてユーラシア大陸と陸続きであったため、大陸では既に絶滅した生物が生き残り、独自の生態系が構築されたところに価値が見いだされた。同じ自然遺産の「小笠原諸島」が一度も大陸と陸続きになったことがないため、独自の生態系が構築されたのとは対照的だ。

 昨年、取材で奄美大島を訪れて、野生生物の観察ツアーに参加した時、アマミノクロウサギを10匹以上観察できたのには感動した。自然遺産の場合、保護と観光の両立が重要になるわけだが、認定ガイドの同行を義務づけるなど、自主ルール作りも進められていた。

 一方、21年は文化遺産として「北海道・北東北の縄文遺跡群」を推薦予定。1994年に青森で発見された三内丸山遺跡を始め、北海道8カ所、青森県8カ所、秋田県2カ所、岩手県1カ所の合計17カ所の遺跡の一括登録を目指している。縄文時代は狩猟中心の原始的社会だと長年思われていたが、最近の研究では、北海道・北東北は同じ文化圏に属し、三内丸山を中心とした考古学的「クニ」が形作られていたと考えられている。農耕や牧畜に頼らず、狩猟・採取・漁労を基本とした定住生活が1万年の長きに亘って続いた例は世界的に見ても稀で、SDGsの考え方にも通じる持続可能な社会がすでに縄文時代にあったのだ。

 筆者は縄文時代の三内丸山遺跡と弥生時代の吉野ヶ里遺跡の両方を訪れたことがあるが、吉野ヶ里が環濠をめぐらし、ガチガチに防御を固めているのに対し、三内丸山の集落は、外部に対して比較的開かれた造りになっていることが印象的だった。

 例年であれば、ユネスコの諮問機関が事前に登録の可否を勧告するので、世界遺産委員会はイベント的な意味合いが強くなるのだが、今回はコロナ禍でどこまで視察が進んでいるのかが未定など、不確定要素も多い。滞りなく世界遺産委員会が開かれ、世界遺産への登録が決定する、そんな世界になっていることを期待したい。

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