先週末、厚生労働省でパワハラ案件が起きたというニュースが飛び込んできた。報道によると、同省の職員だった男性は上司からのパワハラ行為により、うつ病を発症。休職に追い込まれ、復職を果たせぬまま、退職するに至ったという。その上司は省内に配置される「パワハラ相談員」でもあった。

 パワハラを巡っては、職場のパワハラ防止策が法制化され、昨年6月から大企業に対策が義務付けられたところ。「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の改正法、通称「パワハラ防止法」の法案を取りまとめたのは、ほかならぬ厚労省であり、自らの組織ではパワハラを防ぎきれなかったことになる。

 パワハラ防止法では、パワハラは「行ってはいけない」ことだと定め、さらに何がパワハラなのかを定義した。厚労省が告示した「職場におけるハラスメント関係指針」によると、次の3つの要素を全て満たす行為がパワハラと認められる。
(1)優越的な関係を背景とした言動であって
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
(3)労働者の就業環境が害されるもの

 また、指針では、典型的なパワハラの類型を以下の通り整理した。
 ①身体的な攻撃(暴行・傷害など)
 ②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言など)
 ③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視など)
 ④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害など)
 ⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないことなど)
 ⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ることなど)

 さらに、この6つの類型ごとに、具体的にどういった行動が該当するか・しないかの事例も提示。ちょっとした業務指導や改善指示ですぐに「パワハラだ!」と主張されては困るといった企業側の意向を反映してのことだった。

 もっとも、6類型に当てはまるか微妙な行為でも、労働者が苦痛に感じることはある。また、パワハラは行為者(加害者)と被害者という当事者間だけの問題にとどまらない。第三者が職場でのパワハラを見たり聞いたりすることで、心身に不調が生じる、いわゆる「間接被害」を受けるケースも存在する。

 間接被害はあまり取り沙汰されないのが実情だが、重要なポイントなのは間違いない。パワハラ行為とはいえないレベルでも、特定の人にきつい物言いをしていたり、メールの文面等がなぜか攻撃的だったりするのを見せられるのは、なかなかつらいものである。もしかしたら、その特定の人にとてつもない“落ち度”があるかもしれないが、一緒に仕事をしたメンバーでもなければ周囲の人はその落ち度がわからずじまい。だから、周囲の人にしてみれば、張り詰めた空気が流れるのはしんどいし、その状況から逃げ出そうとするため、よくわからないまま、叱責される人物をダメ人間なんだと思い込んだりしたりする。当然、心はずっともやもやしている。

 そんな状況は働く者の士気を下げ、生産性の低下に直結するだけだ。いいことは何一つないと筆者は感じている。

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