2020年度の健康診断の際、「甲状腺腫大」ということで精密検査を受けるように言われた。精密検査を受けるために病院に行くと、医師から「確かに腫れているように見えますね。見てみましょう」と言われ、超音波検査を受けた。装置を当てると、医師はうーん…と若干困った様子を見せた。

「超音波で見ると、甲状腺はほとんど腫れていませんね。腫瘍もありません。しいて言えば、一般的な女性よりも首の筋肉、胸鎖乳突筋に厚みがあるようで、それで甲状腺が腫れているように見えるのかもしれません。何かスポーツをされていましたか?」
「え?…はい、学生のとき、水泳をしていました」
「何泳ぎですか?」
「平泳ぎです」
「あー…首を上げ下げしますから、それでですかねぇ…」
「はぁ、そうですか…」

 幸運にも異常はなく、冗談のような結果になってしまった。といっても、実は甲状腺の精密検査は今回が初めてではない。2017年にも「甲状腺腫」として精密検査を受け、「腫れはあるが血液検査の結果に異常はない」と言われた。医師は、その時に血液検査しなければ実際のところは分からないと前置きしたうえで、甲状腺機能異常が生じた後に自然と治り、甲状腺の腫れだけが残っている状態ではないかと教えてくれた。

 思い当たるのは出産後の激やせだ。2012年に長男を出産した数カ月後、体重が妊娠前より10kgほど減った。もともとむっちり体形のはずが食べても食べてもどんどんやせ、筋肉もすっかり落ちた。イライラして家族にやたらと八つ当たりしたり、以前に比べて疲れやすく家事もままならないほどだった。出産後の甲状腺機能異常とよく似た症状なのだが、「産後だからだろう」と当時は病気を疑うことがなかった。

 妊娠中に「体重65kg以上」として、看護師から太り過ぎを指摘されたこと(恐らく妊娠高血圧症候群のリスクを懸念していたと思われる)があり、出産後は太り過ぎが気になっていた。そのため、体重が減っても「授乳するからやせるのかな。これで丁度ダイエットになる」くらいに思っていたのだ。しかもこの時期は長男の健康診断や予防接種で慌ただしいところに感染症による入院が重なり、さらには職場復帰に向けた保育園探し、自分の妊娠による臍ヘルニアの手術まで加わって、もはやこれ以上自分の不調について割ける時間はない、という状況だった。

 ほかにも症状はあった。出産後、3年目くらいまでは運動しようとプールで泳ぐと、かつてないほどの息苦しさを感じたのだ。息継ぎしようとしても喉が半分ふさがっているようで息を吸い込みにくい。これは甲状腺が腫れている場合に感じる自覚症状に似ている。ただし日常的に息苦しさを感じることはなかったので、「泳ぐのが下手になったのか、練習不足で肺活量が落ちたのだろう」としか思わず、甲状腺が腫れている可能性など疑いもしなかった。

 結局のところ異常なしだった私の場合でも、甲状腺がんなどの病気に対する早期発見や見逃し防止という意味で、健康診断での指摘は大いに役立っているのだろう。一方で、出産後の甲状腺機能異常については「症状が出てから5年後に、しかも自覚症状が完全に治まってから言われても…」というもやもやした気持ちがある。放置しておいて治る程度であればいちいち受診しない方がいいのかもしれない。ただ、そうは言っても家族との関係は悪化し自分の体調・体力的にもつらく、病院での治療で症状が軽減するのなら“真っ最中”に受診したかったと思う。