住宅業界で今、「ウッドショック」という言葉がホットワードになっています。住宅の柱や梁(はり)などに使う木材の需給が逼迫して価格が高騰し、大きな混乱が生じている状況を指します。

 ショックは木材の輸入が滞ったことで始まりました。表面化したのは3月に入ってから。

 新型コロナウイルスの感染拡大は収束がまだ見通せませんが、世界的に木材の需要が増えています。米国の住宅市場は、歴史的な低水準の住宅ローン金利、人が密集する都心から郊外への転居の増加などで絶好調。早期にコロナを抑え込んだ中国も、経済回復への期待が大きく木材が活発に取引されています。

 しかし、木材は十分に供給できていません。コロナ禍で労働者が減って伐採が思うようにいかず、製材工場の稼働率は下がっています。キクイムシによる森林被害が各地で発生。巣ごもり需要でコンテナ物流が一気に増え、港湾の労働者不足も相まって海上輸送が滞っています。スエズ運河の座礁事故も混乱に拍車をかけました。

 そして需給バランスが大きく崩れ、十分な量の輸入材が日本に入ってこなくなりました。日本は木材の自給率が37.8%(2019年)で、輸入材が約6割を占めます。品薄の中で少しでも量を確保するためには、値上げを受け入れるしかありません。

 木造住宅の建設費用のうち、木材の価格は一般的に1割程度といわれています。木材価格の上昇分を単純に転嫁できたとすると、建設費用は数十万円単位でアップする可能性があります。

輸入依存から脱却できるか

 日本は森林面積が国土の3分の2に及び、20年の森林率は経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国で3番目に高い森林大国です。国内に森林資源が豊富にある点が、石油資源を輸入に頼るしかなかった1970年代のオイルショックの時とは異なります。そこで「輸入がダメなら国産で」とばかりに、がぜん国産材に注目が集まっています。

 ところが、国産材への切り替えはスムーズに行われていません。なぜなのでしょう。

 日本の森林は戦中・戦後に大量伐採されて荒廃しましたが、その後の植林で森林面積は年々増加しています。とはいえ森林が育つまで半世紀にわたって木材を輸入に頼ったため、木材の自給率は減少の一途をたどりました。徐々に回復してきたのはここ20年ほどです。

 輸入材への依存は国内林業の産業化を遅らせました。林業従事者も長期にわたって減少し続けています。適切に管理されていない森林も目立ちます。そんな中で「国産材の供給を急に増やせ」といわれても、すぐに対応できるものではありません。結果、地域差はあるものの、輸入材に続き国産材でも木材不足や価格高騰を招いています。

 輸入材は「必要な物を、必要なときに、必要な量だけ」という住宅業界の飽くなきニーズを満たしてきました。しかし、木材は本来、森林に木を植え育て、伐採し、搬出、製材、乾燥、加工、流通と、長期にわたる計画的な生産体制が必要になるものです。伐採した後も再び苗を植えなければ持続可能になりません。

 国産材に注目が集まっている今は、林業を成長産業にする絶好の機会です。

 森林や、森林からつくり出される木材は、癒やしやリラックスなど心身に好影響を与える効果が期待できます(関連記事:木に囲まれた空間は心身に好影響を与える)。

 また、森林は二酸化炭素(CO2)を吸収し、木材は燃やさない限り炭素を貯蔵し続けます。日本は50年のカーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)、30年度までに13年度比で46%削減する目標を打ち出しています。

 森林と木材の果たす役割は大きいといえます。国産材には輸入材の単なる代替ではなく、未来につながる価値を持たせることができればと思います。

(タイトル部のImage:arkgarden -stock.adobe.com)