厚労省の喫煙情報の扱い方に政治家への「忖度」はないか

 日本はどうか? 日本呼吸器学会などの関連学術団体や健保組合、一部自治体がホームページ上でCOVID-19における喫煙のリスク説明や禁煙推奨を行っているにとどまり、政府、厚生労働省からの喫煙リスクに対する公式の注意喚起は今のところ聞かない。5月4日に政府の専門家会議が提示した、感染を防ぐための「新しい生活様式」でも、喫煙のリスクや禁煙には一切触れていない。

 厚労省のホームページを探すと、「健康・医療 新型コロナウイルス感染症について」のページのかなり下のほうに、「新型コロナウイルス感染症と喫煙について」と題するリンクがかろうじて見つかった。「新型コロナウイルス感染症」「喫煙」といった検索ワードで積極的に見つけにいかないと到底たどりつけない。そのページを開いてみた。「新型コロナウイルス感染症の重症化リスクと喫煙との関連については、いくつかの報告があります」として、関連文献のリンク先が紹介されているが、その結果の概要説明は一切なく、それぞれの内容を知るにはリンク先のPDFを開いて原著の医学英語を読まなければならない。せめて喫煙が重症化と有意に関連があるのかないのか、簡単な日本語の結果説明ぐらいつけてもよいではないか。

 読者も厚労省のこのページにアクセスして、「新型コロナウイルス感染症と喫煙について」と題するリンクを探し出して厚労省の不親切ぶり、消極性を実感してほしい。この喫煙と新型コロナ重症化の関係性に関する情報公開の自粛具合を見て、政治家への「忖度」と感じるのは筆者だけだろうか。

 自民党および議員には、タバコ業界 (たばこ販売政治連盟、たばこ耕作者政治連盟)から多額の政治献金や寄付がなされている。毎年の国たばこ税、地方たばこ税、たばこ特別税の総額は2兆円を超える。加藤勝信厚労大臣をはじめ自民党議員の中には元大蔵・財務官僚の議員もいて、喫煙者も多いと聞く。

 最近民間企業が実施した、喫煙者を対象としたコロナ感染リスクに関する意識調査(回答者195人)によれば、64.4%の人がリスクを知って今後本数を減らすと答えたという6)

 新型コロナウイルス感染症の流行は夏までにいったん終息に向かうかもしれないが、秋以降に第2波がやってくる可能性もある。WHOやFDAのように厚労省が、喫煙のCOVID-19重症化リスクを国民に広く注意喚起し禁煙を推奨、受動喫煙対策を強化することで、救える命は少なくないのではないか。


[参考文献]

1)WHO statement: Tobacco use and COVID-19 11 May 2020

2)Guan WJ, et al. Clinical Characteristics of Coronavirus Disease 2019 in China. N Engl J Med. 2020 Feb 28: NEJMoa2002032. doi: 10.1056/NEJMoa2002032

3)Chinese Medical Journal: February 28, 2020 doi: 10.1097/CM9.0000000000000775

4)European Respiratory Journal 2020; doi10.1183/13993003.00688-2020

5)FDA NEWS RELEASE Coronavirus (COVID-19) Update: Daily Roundup April 28, 2020

6)喫煙とコロナウイルス感染リスクに関する意識調査

(タイトル部のImage:arkgarden -stock.adobe.com)