漢方薬といえば、どこの国を思い浮かべるでしょう?

 それは日本だ、と思われた方が多いかもしれません。日本の漢方薬のシェアは、中国を除く世界で約8割と言われています。漢方薬は、中国を起源とした伝統医学を基に日本で独自の発展を遂げ、そして世界に広まっています。

 そしてその中国も、漢方薬で有名な国と言ってもちろん間違いではありません。漢方薬の原料となる生薬を、日本は約8割、中国からの輸入に頼っています。通常の農作物の多くが種まきから収穫まで1年であるのと異なり、漢方薬用の生薬は出荷するまでに数年がかかります。このため、漢方薬の需要は高まっているにも関わらずに、日本国内での生薬生産は増えておらず、その分、中国からの輸入に頼っているというのが現状です。

 その一方で、生薬の日本の輸入量は、中国の生産量の1%に満たないという統計データがあります。中国国家統計局の資料によれば、2016年時点で中国の生薬の生産量は約400万トン。そのうち、日本の輸入量は約2万トンです。もちろん、中国の国内で消費される量も多いのですが、中国からすれば、自分達からわずかな量の生薬を輸入している日本が、他の国への輸出ではトップシェアだという、少し歪んだ状況に見えるかもしれません。

 こういった状況を生み出している最大の要因は品質です。中国の漢方薬(中国では中医薬と呼びます)は、日本ほど品質に関連する基準が整備されておらず、このため十分な品質を担保できるような開発技術や生産技術などの面が遅れていると言われています。一時、日本を訪問する中国人の「爆買い」が話題となりましたが、その中身に、中国産の生薬を原料とする漢方薬も含まれていました。健康を維持するために接種する漢方薬だけに、中国の富裕層は自国の製品よりも、より信頼性の高い日本製を望んでいたと考えられます。

 生薬で最大の生産国である中国と、漢方薬の開発生産で高度な技術を持つ日本が協力すれば、世界の漢方薬の市場を大きく拡大でき、双方がウインウインとなる可能性は高いでしょう。先日、中国の中でも著名な生薬の生産地である陝西省漢中市の政府の方とお話ししましたが、「商品化や加工技術などの面で、日本の力を借りたい」と熱望していました。2021年度を初年度として始まった「第14次5カ年計画」においても、中医薬業界の発展が重要であると提示されています。日経BP 総合研究所では、中国の漢方薬の現状を解説するセミナーを計画しています。そのような場でぜひ、両国が協調できるようなアイデアを考えていただけると幸いです。

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