厚生労働省のホームページでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内発生動向を日々更新しているが、20歳未満の陽性者数は他の年代に比べていまだ格段に少ない(図1)。

図1●新型コロナウイルス感染症の年齢階級別陽性者数(出所:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向」 2020年6月3日18時時点)

 COVID-19に子どもがかかりにくい理由として、4月20日付Editor's Noteで4つの仮説を紹介し、そのうち、「小児では、新型コロナウイルスのヒト細胞への侵入経路(受容体)であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の発現が少ない」という説に注目すると書いた。

 その説を裏付ける研究結果が、5月20日付の米国医師会雑誌(JAMA)オンライン版に発表された。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学の研究グループが気管支喘息の研究目的で採取・保管していた4〜60歳の喘息患者の鼻粘膜上皮を用いて、年齢によるACE2の発現量の違いを分析したところ、小児ではACE2遺伝子の発現量が成人に比して少なかったと報告したのだ1)。発現量は10歳未満が最も少なく、年齢が上がるとともに増加した(性別と喘息の有無で調整)。論文の著者らは「検体に60歳以上のものが含まれていないなど研究に限界はあるが、小児のACE2遺伝子発現量が成人より少ないことは、小児がCOVID-19にかかりにくい理由を説明できる」と結論づけている。

 ACE2は以前も説明した通り、心臓や血管、肺、腎臓、消化管など全身の組織に発現し、血圧や腎機能、水・電解質のバランスなどを調節するレニン・アンジオテンシン系(RAS)の中で働く酵素として知られていたが、最近の研究により、ACE2は新型コロナウイルスの体内への侵入経路であることが突き止められた。ウイルスが肺胞上皮などの細胞膜に存在するACE2に結合することで細胞内に侵入し、生体の免疫機能を惹起してサイトカインストームを生じさせて重篤な肺炎などを引き起こすのである。

 では、COVID-19発症の鍵を握るこのACE2の発現量は、なぜ小児では少なく、年を重ねるとともに増加していくのか? もしその理由が明確になり、抑制する手立てが見つかれば、第2波、第3波が来たとしても、感染者・重症者数を20歳未満並みに抑えることができるのではないか。