5月14日に始動した本サイト「Beyond Health」には、既に100本以上の記事を掲載しています。これらをあらためて見返してみると、“ある言葉”が随所に出てきていることに気付かされました。

 日本のインターネットの父と称される、慶応義塾大学 大学院 政策・メディア研究科委員長 環境情報学部 教授の村井純氏へのインタビュー記事「異業種と結び付いたときのポテンシャルは凄い」には、こんな一節があります。「特に医療・ヘルスケア分野はサイロ化していて、これまでは他の産業との壁がとてつもなく高かった。これが異業種と結び付いていったとき、凄いポテンシャルを持つと思っています」。

 一方、怒涛の異業種連携を展開しているフィリップス・ジャパン 代表取締役社長の堤浩幸氏へのインタビュー記事「企業のエゴだけでは、社会は変えられない」。ヘルスケア業界全体でのIT化の遅れの理由として、同氏は「1つには企業や病院のサイロ化が挙げられるでしょう」と指摘しています。

 ここで既にお分かりいただけたかと思います。そう、「サイロ(サイロ化)」という言葉です。意図的に編集して使っている言葉ではなく、期せずしてインタビュイー(取材対象者)から出てきた言葉になります。

 デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員の増井慶太氏によるコラム「ヘルスケアの未来地図」の第1回、「ヘルスケアは『未開の地』へ」では、「これまでのヘルスケア、ライフサイエンス、医療の産業は、『サイロ型』の構造を取っていた」とした上で次のように指摘しています。「今後は異業種産業の技術進化、社会や人々の価値観の変化が入り交じり相克することで、一方通行のバリューチェーンは瓦解する。直線でも並列でもなく、システムとしての最適解に目配せをして、場合によっては『未開の地』に足を踏み入れなければならない」。

 直接的に「サイロ」という言葉は出ていませんが、「ベンチャーと医療機関の間に齟齬がある ~大事なのは『エコシステムづくり』、VC視点から指摘~」という記事も同様です。これらの記事に登場する方々が訴えているのはほぼ同じことであり、おそらく本サイトの読者の多くの課題意識もそこにあると思います。

 庄子育子が斬る! 行政ウオッチの記事「厚遇される医師の働き方改革」の見出しの通り、昨今、医師の働き方改革に注目が集まっています。去年、筆者がある大学病院の教授に医師の働き方改革についてインタビューした際の、こんな発言が今でも印象に残っています。「どんな業界でも特別なものはあり、医療業界では応召義務(正当な事由がなければ患者からの診療の求めを拒んではならないという医師法で定められた義務)などがある。しかし医療現場の業務を分析していくと、『書類の山が…』といった課題が挙がってくる。結局は、『それは医療業界に限った話ではないよね』というオチになる」。

 この話の真髄は、議論を一緒くたにするのではなく、「特別なものとは何か」を見つめ直すことから始めるべし、というメッセージだと筆者は理解しています。おそらく、先の「サイロ化」の話も同じ。サイロを一気に取り壊すのではなく、どこを残してどこを崩していくべきか――。そんな視点からの議論を今後も深めていきたいと思っています。

(タイトル部のImage:arkgarden -stock.adobe.com)