筆者は、 3月30日付Editor’s Noteで「新型コロナウイルスは高温多湿で死滅する?」と題して、「新型コロナウイルスは低温低湿度地域に広がり、高湿度環境では速やかに死滅する性質を持つことから、日本では梅雨と夏の到来により感染リスクが下がる可能性がある」と述べた。これまでの国内感染者数の推移を見るに、その予測は外れていなかったが、ここに来て東京を含む首都圏で新規感染者数が減少から横ばいに転じ、予断を許さない状況が続いている。

 それら新規感染事例の多くは、繁華街の接客を伴う飲食店や企業、学校などで起きており、いわゆる「3密」(密閉、密集、密接)下でのクラスター発生とみられている。西村康稔経済再生担当相は記者会見で、「数自体で何か方向性を変えるということは考えていない。数字の分析を進めながら緊張感をもって対応したい」と述べているが、むやみに新たな休業要請やアラートの再発動を行うのではなく、各事例で感染が広がった要因を詳しく分析し、それに基づく対策を講じるべきだと筆者も考える。

 新型コロナウイルスの感染拡大・収束の要因について、6月17日に名古屋工業大学先端医用物理・情報工学研究センター長の平田晃正氏らの研究グループが興味深い分析結果を発表している1)。1日当たりの新規陽性者数が10人を超えた19都府県の感染拡大・収束期間を算出し、様々な因子との関連を統計解析したところ、感染拡大・収束期間は「人口密度」「絶対湿度」と強い関係があり、気温とも相関することが見いだされた(図1)。

図1●感染の拡大・収束期間と人口密度(左)、日最大絶対湿度との関係(右) (出所:名古屋工業大学プレスリリース)

 感染拡大・収束期間は人口密度が高い都府県ほど長く、「3密」の影響は人口密度で近似されることが分かったという。また日の最大絶対湿度(g/m3)が低い地域ほど感染拡大・収束期間は長くなる傾向にあった。

クラスター発生の原因はエアコンの「風」?

 名古屋工業大学の研究グループによる分析結果は、東京を含む首都圏で新型コロナウイルス感染がなかなか終息しない理由に、「3密」と「絶対湿度」が関係していることを支持するものであり、あらためてソーシャルディスタンスの確保や換気、室内の湿度コントロールの重要性を示唆している。

 ソーシャルディスタンスの確保や飛沫防止については周知が進んでいるが、これからの季節、対策の盲点になりそうなのが空調設備だ。エアコン使用中の部屋は冷気を逃さまいと換気を怠りがちで密閉空間となりやすいうえ、エアコンの使用に伴う空気の対流により感染が広がる危険性が指摘されている。

 CDC(米疾病対策センター)が発行する『Emerging Infectious Diseases』誌で、中国・広州市内のレストランでの新型コロナウイルスのクラスター発生がエアコンの送風によるものとの報告がなされている2)。レストランでの感染者10人は、エアコンの吹き出し口から見て1列に並んだ3つのテーブルに分かれて座っていたことが分かり、発症前の1人の感染者のウイルスを含んだ飛沫やエアロゾルが、エアコンの気流に乗り他のテーブルで食事をしていた3家族9人に飛び、感染が広がったと論文の著者らは結論づけている。

 新型コロナウイルスのアウトブレイクが起きたダイヤモンド・プリンセス号も省エネ対策として新鮮空気を一部取り入れて環気させる空調方式を採用しており、空調の送風と循環が船内アウトブレイクの要因の1つとの指摘もなされている (関連記事)

 東京都内や近県で頻発している接客を伴う飲食店や職場でのクラスター事例においても、エアコンの送風が関係している可能性がある。エアコンを止めれば、熱中症などの危険性が増す。エアコン使用中であってもこまめに窓やドアを開けて換気に努めることや席の間隔を空けることが求められそうだが、政府は事例の分析を早急に進め、空調使用による感染拡大リスクとクラスター発生への対策について何らかの注意喚起をすべきではないだろうか。


[参考文献]

1)新型コロナウィルス、人口密度と気温・絶対湿度が影響 〜新型コロナウィルスの拡大・収束期間、感染者数・死者数の分析結果について〜(2020年6月17日、名古屋工業大学プレスリリース)

2)Jianyun Lu, et al., "COVID-19 Outbreak Associated with Air Conditioning in Restaurant, Guangzhou, China, 2020." Emerging Infectious Diseases, Vol.26, No.7, July, 2020

(タイトル部のImage:arkgarden -stock.adobe.com)