「COVID-19が長期化していくと、がん診療・検診に対するケアが非常に落ち込んでいって、最終的にがん死亡率が上がってしまうのではないか」──。国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)が7月17日に開いた「新型コロナ時代のがん診療・検診のあり方〜大腸がん検診を中心に〜」と題するメディアセミナーの冒頭、病院長の島田和明氏は危機感をあらわにした。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に伴う緊急事態宣言時にほぼ全ての市区町村や施設で「がん検診」が中断され、宣言解除後徐々に再開されつつあるものの、首都圏中心に感染がなかなか終息しないなか、ステイホームを続け検診受診をためらっている人々は多い。セミナーでは、がんの早期発見の重要性やエビデンスとともに、COVID-19への万全の備えの下、6月から精密検査や外来診察、任意型検診(人間ドック)を円滑に行う体制を整え、受診者を積極的に受け入れている同病院の状況が紹介された。

 COVID-19の感染者数が全国で累計2万4000人を超えたなどと報道される一方で、毎年新たに約100万人ががんと診断され、約37万人ががんで亡くなっている。「日割りで計算すると、1日に2500人以上が新たにがんと診断され、1000人以上ががんで命を落としていることになる。COVID-19の感染者数も当然気になるところだが、癌診療・検診も同時に真剣に考えないといけない」と国立がん研究センター中央病院検診センター長の松田尚久氏は語気を強める。

 様々ながん種の中でも近年特に問題視されているのが、我が国における大腸がんの罹患率・死亡率の増加だ。その死亡者数は増加の一途をたどっており、臓器別では肺がんに次ぐ2位となっている。

 大腸がんは、便潜血検査や大腸内視鏡検査によるスクリーニング(検診)法が確立しており、早期に発見し内視鏡下で摘除すれば完治可能ながんであることも知られている。実際、大腸がんスクリーニング受診率が70%以上と高い米国では、50歳以上の大腸がん罹患率が2000年以降32%減少し、その死亡者数も34%減少していることが報告されている。

 その減少の要因をマイクロシミュレーションモデルで分析した研究によると、減少要因への寄与度が最も大きかったのはスクリーニング技術。次いで生活習慣(食事、禁煙、節酒、運動等)の修正、治療の進歩の順だった1)