血糖が高いまま放っておくと……。健診や病院の検査でHbA1cや随時血糖値の異常を指摘されたことがある人は、医師から耳にたこができるほど聞かされたフレーズかと思います。その後に続くフレーズも言わずもがな、高血糖状態が続くことで全身の血管と神経が侵されて、全身の臓器に様々な障害を引き起こし……。そして必ず挙げられるのが、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害といった三大合併症。さらに、脳梗塞や狭心症、心筋梗塞、末梢動脈疾患(PAD)といった心血管疾患の名が出ることもあるでしょう。

 だいたいここまでで、患者の方は「糖尿病の怖さは分かった、もう分かったから」となり、医師の方も忙しいのか、さらに言うのはさすがに残酷で患者の心証を害するのを恐れてか、その先をあまり説明しません。本当はその先の末路を説明して予防治療への動機付けを強化しなければいけないのですが……。

 その先とは──。まず糖尿病網膜症は、緑内障に次ぐ中途失明の原因の第2位です。ある地域の調査では、糖尿病を発症してから10年たった人の50~60%が糖尿病網膜症を発症するといわれています。糖尿病腎症は糖尿病患者の3分の1に発症するといわれ、人工透析導入の原因の第1位です。さらにその先に待ち構えているのは──。上記の理由で医師が全く説明しないか、三大合併症や心血管疾患に付け足すくらいにしか説明されないので、リスクが高いにもかかわらずあまり認識されていないのですが、それは「足切断」です。

 糖尿病神経障害を合併することでちょっとの足傷でも気づかず、高血糖で傷が治りにくいのも相まって足先に潰瘍が発生し、壊疽を起こし痛みも伴います。この病態は、PADなど末梢血管閉塞を背景に起こることから「重症下肢虚血」(CLI)と呼ばれ、特に人工透析を受けている人に高率に起こります。血行再建術などの治療が奏功しなければ、下肢切断により疼痛や進行を防ぐしかありません。以前の記事でも紹介しましたが、糖尿病患者の足潰瘍の発症率は4~25%と高く、PADの有病者数は約320万人、人工透析患者を中心にCLIは約18万人、そのうち1万人以上が下肢切断を余儀なくされるといわれています。つい最近、プロレスラーの谷津嘉章氏が試合後、糖尿病の影響で右足先の血豆から壊死が進み、右足膝下を切断していたことが報道され話題になりました。

要介護状態の原因としての糖尿病性足病変

 1000万人超という日本の糖尿病有病者数を考えると、糖尿病性潰瘍や下肢切断に至る人がますます増えることが予想されます。最近では、糖尿病が認知症のリスクを高めることも分かってきました。平均寿命と健康寿命の差、すなわち要介護状態の原因として今後、糖尿病性の足病変や下肢切断も重要視してその積極的予防を図るべきでしょう。

 このほど「日本フットケア・足病医学会」という新学術団体が発足しました(関連記事:「足の後進国」から脱し、 100歳まで歩ける足を)。「足うらフェス2019 フォトキャンペーン」など市民向けの啓発活動も盛り上がっています(関連記事:健診結果の悪い人を受診させるには)。足病変を早期に発見し、生活改善指導や血糖コントロール治療を行えば、重症化を防ぐことができます。また、血管幹細胞による再生医療が開発されてきており(関連記事:糖尿病に伴う足病変に血管再生治療が効いた)、重症例でも下肢切断を回避できる可能性が出てきました。Beyond Healthでは今後、こうした糖尿病性足病変に関する啓発活動や予防治療のテクノロジー開発を応援して、できるだけ多くの人を「末路」から救うことのお役に立ちたいと思っています。

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