先日、島津製作所が、ある医療機器を発売した。少量の血液からアミロイドβを計測する医療機器である。

 アミロイドβといえば、アルツハイマー型認知症の原因とされるたんぱく質。つまり、わずかな血液を検体とする簡便な手法で、認知症診断を支援するバイオマーカーを検査できるというわけだ(関連記事:“血液1滴”からアルツハイマー型認知症のバイオマーカー計測)。

 今回の医療機器の実現には、ノーベル賞の技術が寄与している。同社 田中耕一記念質量分析研究所 所長 エグゼクティブ・リサーチ フェローの田中耕一氏が2002年にノーベル化学賞を受賞した「マトリックス支援レーザー脱離イオン化法」(MALDI)である。

 田中耕一氏は、ノーベル化学賞の受賞以降、その技術を応用して「血液1滴でさまざまな疾患を診断できるようにしたい」と語ってきた。かねてこうした分野の取材を続けてきた筆者も、インタビューやイベントなどで度々、その思いを耳にしてきた。

 振り返ると、今から10年前ほどのインタビューで、田中耕一氏はこんなことを語っていた。

「私は大学卒業後、医療の分野に携わりたくて、医療機器を手掛けていた島津製作所に入社しました。しかし、その希望は見事に破れ、当時は医療とまったく関係がなかった質量分析の分野に関わることになった経緯があります。めぐりめぐって、今では質量分析の技術が今後の医療に大いに役立とうとしているわけです」1)

1)小谷ほか、「機は熟した 今こそ医療に飛び込もう」、『日経エレクトロニクス』、2012年2月6日号

 まさに今回、“入社時の希望”だった医療機器の発売に至ったことになる。会見に出席していた筆者が、思わず過去の記憶をたどったのは、こうしたわけだ。

 同時に、こんなことも思い出した。数年前、筆者が企画したイベントに田中耕一氏に登壇いただいた時のことである。かつて医療と関係がなかった質量分析の技術を医療に応用するに当たってのカギを「異業種連携や異分野融合」としていた同氏に、その神髄を語ってもらった。

 それは“漫画”だという。