8月30日にアップした「庄子育子が斬る! 行政ウオッチ」では、厚生労働省の若手職員の手による業務・組織改革のための緊急提言を取り上げ、記事にした。提言の中味は、ブラック過ぎる労働実態をあぶり出すと同時に、誰が見ても納得のいく改善策を具体的に示しており、見応え・読み応え十分である。

 それにしても、省内の「恥部」をよくここまでさらけ出したものだと筆者はある意味、感嘆させられた。もともと、厚労省は他省庁と比べて、一匹狼気質がそろうことなどもあって、他人のやることにいちいち口出しをせず、その結果、若手も物が言いやすい職場であると言われることが多い。忖度なしで恥部の発露ができたこと自体、風通しの良さを物語っていると言えるだろう。

 話を提言に戻すと、筆者はとにかく半端ない熱量を感じた。全体を通じて、至るところに「この国を良くしたい」という情熱がほとばしっている。だからこそ見る者・読む者の心を打つのだろう。

 ただし、提言に込められた「熱さ」の影で気になる点があった。緊急提言をまとめた若手改革チームの代表を務めた久米隼人課長補佐は、自身のFacebookやメディアのインタビューでこんな思いを吐露していたことに関してだ。

 今回の緊急提言に対して、一部報道には、「若手の内部告発」や「反乱」といったようなワードも出ているが、自分は、そういう趣旨とは違うと思っている。「好待遇にしてくれとか、楽をしたい」という思いは一切ない。厚生労働省や、霞が関の現状を変えていき、時間ができたら、もっと政策検討に費やせる時間に充てて、この国を変えたい。そして、今よりも少しだけ、家族のために使える時間を増やしたい――。

 筆者はある件で久米補佐と一緒に仕事をさせていただいたことがあるほか、取材を通じて久米補佐の省内外での活動を見聞きし、他者からの人物評もいくばくか存じ上げている。自分が厚労省を変えたい、そしてこの国も変えたいという、まっすぐで熱きハートの持ち主で、抜群の行動力をもって、これまでに様々な課題を乗り越えてきた。だからそんな久米補佐がリーダーとなってまとめた今回の緊急提言の熱さはよく分かるし、上記のように語る久米補佐の思いは本当に尊い。

 だが、「『好待遇にしてくれとか、楽をしたい』という思いは一切ない」とまで言い切ってしまうと、浮かばれない人も出てくるのではないかと思えてならない。「好待遇にしてくれ」「楽をしたい」は本来禁忌ワードではないはずで、業務に見合った適切な待遇は当然、考慮されるべきものであるし、仕事で楽をするのが決して悪いことではない。

 うがった見方をしているようではあるが、筆者としては、久米補佐の発言を踏まえると今回の提言は「自分たちは本来の業務をもっとやりたい、きちんと働きたい、もっとちゃんと働かせてくれ」とのメッセージとも読めた。やりがいに沿ったものになるなら、ますますガシガシ仕事をすることになりはしないかと筆者は感じている。

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