デジタル庁が2021年9月1日に発足した。省庁や自治体のデジタル化だけでなく、社会全体のデジタル化に向けた「司令塔」を託された組織ではあるが、まだ体制が固まった段階。その実力はまだ計りかねるところだが、期待を込めてヘルスケア領域にどんな変化が起こるのか展望してみたい。

 そもそも、デジタル庁の発足はヘルスケアとは切り離せない関係にある。新型コロナウイルスの拡大により、「全国民に特別定額給付金(10万円)を支給する」ことを決めたものの、その支給が滞る事態に直面したのが直接のきっかけだった。支給手続きには全国民に割り当てたマイナンバーの活用によるオンライン申請が推奨されたが、「支給申請を機会にマイナンバーカードを取得したい、あるいは取得済みの人がパスワードを忘れて問い合わせるなどで、市民が役所の窓口に殺到する」などといった状況を招いてしまった。結局、支給が早かったのが、見切りをつけて郵送による手続きを選んだ自治体だった。

 あらかじめマイナンバーに口座情報が紐づけされていれば、支給の決定直後、速やかに指定口座に振り込まれるという形がとれたはずだ。こうした活用シーンを細かく想定し、なおかつ使いやすい仕組みづくりとシステム設計を期待したい。

 さらに期待したいのが、健康に関する情報を社会全体で共有し、うまく流通させること。現在のコロナ禍でも、「医療体制のひっ迫」が客観的な数字なく語られたり、入院希望者の受け入れ先が見つからなかったりといった状況を耳にする。デジタル庁が司令塔となり、社会全体を見渡すことによって、限られたリソースを最適配分できるような、データドリブンな社会にできないものだろうか。

 健康情報については匿名性を確保したうえで活用することで、個人の新しい消費が喚起されることにも期待したい。健康情報を活用できれば、いわゆる未病領域にある人が、適切な食事や運動を推奨してもらうことで、疾病を未然に防ぐサービスがたくさん生まれるのではないか。発病した人でも、自身の健康状態を誰にも知られることなく消費活動に結び付けたいというニーズは少なからずあるはずだ。

 健康情報は機微な情報だけに難しいテーマではあるが、デジタル庁にはユーザー視点に立った情報流通の仕組みづくりに期待したい。

(タイトル部のImage:arkgarden -stock.adobe.com)

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ほか

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