日本歯科医師会(日歯)は現在、「令和における歯科医療の姿~2040年を見据えた歯科ビジョン」と題した提言を取りまとめ中だ。少子高齢化がピークを迎える2040年に向けて、歯科保健医療のあるべき姿や果たすべき役割を提示し、その実現のためのアクションプランを盛り込んで実行を目指すというもの。新型コロナウイルス感染症の影響もあって策定作業に大幅な遅れが生じたものの、完成間近で、そう遠くない時期にお披露目となる方向だ。Beyond Healthでも追って同ビジョンの中味について詳しく取り上げたい。

 さて、この歯科に関して、歯とお口の健康が、からだの健康を保つためにも重要であることはいまやよく知られる。その中身はこちらの記事を参照してほしいが、歯とお口の健康が全身の健康に密接に関わる以上、当然ながら医療の財政側面に与える影響も大きい。実際、日本歯科総合研究機構が、医療に関する膨大な情報が蓄積された国のデータベース(NDB)を活用して、230万件の医科、歯科のレセプト(診療報酬請求明細書)を統合分析したところ、男女を問わず、あらゆる年齢層で歯の本数が20本以上のグループは19本以下のグループより医科医療費が低かった(2016年調べ)。つまり、増大していく日本の医療費に歯科ができることは大きいのだ。

 さらに、歯とお口の健康は、話すことや笑うことにつながり、生活の質の向上にも直結する。

 明るい未来のために歯科のポテンシャルはかなり高そうであるのは間違いない。とはいえ、歯とお口の健康チェックの機会となる歯科健康診査の状況を見るとかなりお寒い状況である。現在、法律で義務化されている歯科健診は乳幼児から児童・生徒まで。社会人になって働くようになった場合、雇用する事業者側には、労働者が健康で働けるよう、健康診断を実施することが労働安全衛生法で義務付けられているものの、その健診項目に歯科は含まれていない。

 読者の皆様の中にも企業健診で口の中まで診てもらったことはおそらくないと思われるが、もしその経験があるなら、ぜひ一報いただきたい。企業が自主的に費用をかけて歯科検査項目を取り入れている事例であり、その取り組みを追ってみたいからだ。個人的に、企業の「健康経営」を考える上で、歯科健診の実施は非常に重要だと感じている。


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