「高血圧の国民を10年間で700万人減らし、健康寿命を延ばす」──。全国700人以上の高血圧専門医を中心に組織する日本高血圧学会(理事長:慶應義塾大学教授の伊藤裕氏)は昨年、「日本高血圧学会みらい医療計画」を策定し、こんな目標を掲げました。

 高血圧は、がんに次いで日本人死因の2位を占める心血管疾患の最大の原因。我が国の有病者数は約4300万人で、そのうち治療を受けコントロールされている人は約1200万人、治療を受けていてもコントロール不良だったり、まだ診断されておらず治療を受けていない人はそれぞれ1000万人以上いると推計されています。高血圧は全身の臓器につながる動脈に粥状硬化を生じさせ、脳卒中や心筋梗塞のみならず、大動脈解離や慢性腎臓病、認知症、骨粗鬆症など、健康寿命を脅かす様々な重大疾患を引き起こす大本であり(関連記事:人は大動脈から老いる─血管内視鏡が映す病気の真実)、「高血圧を制するものが健康寿命を征す」といっても過言でないほど重要な介入ターゲットです。

 同学会では、そんな高血圧患者700万人を減らすために、次の3つの方針を打ち出しています。(1)全国民が生涯にわたって、ガイドラインに沿った質の高い高血圧診療を受けられる診療体制の構築、(2)革新的な研究手法による新たな病態の解明と治療法の開発とともに、AI(人工知能)・ビッグデータの活用や、IoTを利用したオンライン診療により高血圧の予防・予知・制御を可能にする「みらい医療」の推進、(3)全国民が自身の血圧を知り減塩・禁煙・運動などの良質な生活習慣を実践してもらうための啓発活動と、行政との連携による「みらい医療」の実現──。

 (1)については今年4月に、大部分の患者の降圧目標を130/80mmHg未満へと強化するなどの内容を盛り込んだ「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」を発行。(3)に関しては7月に、自治体主導の生活習慣介入などにより降圧目標未達成者や血圧未測定者ゼロなどを目指す「高血圧ゼロのまち」のモデルタウンを公募する、といったアクションを起こしています。

 そして(2)において、「みらい医療」の核となる新しい学術領域として日本高血圧学会が提唱し推進するのが、「Digital Hypertension」。同学会フィーチャープラン推進委員会タクスフォースB(新学術領域開拓)ワーキング長で東京大学大学院医学系研究科循環器内科講師の赤澤宏氏は、「Digital Hypertensionは、新しいテクノロジー(新しい機器、新しい技術、新しい解析方法)の開発とその連動を学術としてとらえ、高血圧診療とヘルスケアに変革を導入していく、これからのサイエンス」と説明します。その背景として、ICT(情報通信技術)によって、人の体がインターネットにつながっている状態(Internet of Human:IoH)、それによるコネクティッドヘルスあるいはコネクティッドメディシンが実現可能になってきたことを同氏は挙げます。また、レセプトデータや健診データといった大規模データベースに加えて、服薬アドヒアランスや血圧コントロールの状況、さらには生活習慣に関する情報をビッグデータとして大量に取得し、AIを活用して解析することが可能になってきたことも大きいといいます。

 Digital Hypertension推進に関するアクションの第一弾として、日本高血圧学会は「第1回Digital Hypertension Conference 」(代表世話人:赤澤氏)を、10月25日(金)に京王プラザホテル(東京都新宿区)にて、第42回日本高血圧学会総会と同時開催します。同総会はアカデミア・医師中心の学術集会ですが、このカンファレンスの演者は、「異なる領域の研究者間の広範かつ有機的な交流を促進するため」(赤澤氏)、アカデミアだけでなく、製薬・ヘルスケアや電機、情報・通信などの産業界や政府・行政など多岐の分野にわたっています。また、参加費も製薬をはじめ産業界からの参加者を想定して、通常の学術集会に比べて安く設定したとのこと。興味ある方はぜひ行ってみてはいかがでしょうか(プログラムはこちら)。


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