前々回、Editor's Noteで紹介した日本の世界遺産候補「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」と「北海道・北東北の縄文遺跡群」は2021年7月に開かれた拡大第44回世界遺産委員会で、無事に登録が了承された。従来の世界遺産会議は、各国が持ち回りで開催するイベント的な要素があったが、今回はコロナ禍の影響でオンラインでの開催となった。日本の新しい世界遺産は、どちらも観光的な魅力も高い物件なので、コロナ禍が収まった後は、内外含めた観光客の誘致が期待できそうだ。ただし、観光活用しながら、世界遺産として登録を維持するためには、保護と開発のバランスの取り方が重要になってくる。

 そうした意味では、今回の世界遺産委員会では久しぶりに、画期的な決定があった。2003年に登録されたイギリスの「海商都市リヴァプール」が、登録抹消されたことだ。抹消の理由は、都市開発により著しく景観が損なわれたこと。登録抹消はオマーンの「アラビアオリックスの保護区」、ドイツの「ドレスデン・エルベ渓谷」に続く3件目。いずれも保護よりも開発を優先したことが原因だ。この登録抹消は、委員会での投票で決定されるわけだが、突然決まるわけではなく、まずは「危機遺産リスト」への掲載が決定される。リヴァプールの場合は、2012年から危機遺産リストに掲載されている。

 では今後、登録が予想される日本の世界遺産候補を見てみよう。現在、日本の「暫定リスト」に掲載されているのは、文化遺産5件。2022年はコロナ禍の影響で、審査候補にあがっている物件がなく、2023年の推薦を目指す候補に「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」がある。2007年に登録された「石見銀山」同様、当時の国際経済に大きな影響をもたらしたことが推薦の理由となっている。さらに2024年の登録を目指す物件に、「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」と「彦根城」がある。特に彦根城は「姫路城」や「法隆寺」とともに最初の暫定リストに掲載された物件。姫路城と法隆寺が1993年に登録される一方で、30年近く放置されてしまった曰く付きの物件だけに、地元としては悲願の世界遺産登録に向けやっと動き出した形だ。

 2021年時点で、世界遺産の登録数は1154件。一方、危機遺産リストに掲載されている物件は52件。増やしすぎで保護に資金が回せないという批判がある一方、やはり観光客誘致という経済的メリットは大きく、今後も世界遺産の数は着実に増えていくことが予想される。

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