「それがあると、仕事の生産性が半分に落ちるんです」「それがあると、月のうち20日は調子が悪くって、調子がいいのは10日間だけ」…。

 もしもあなたの部下がこんな告白をしたら、あなたはきっとこう問うはずだ。「そんな状態を放置していてはいけないね、対策は打っている?」。

 「それ」とは「毎月の生理」。そして、その女性はその困りごとに対して、何の手も打っていない可能性が高い。というのも、働く女性の55.7%は、毎月の生理がつらくて仕事に支障があると答える*1)が、現実は何の対策もせずその状態を放置している人が44.6%もいる*2)からだ。

 働き方改革が叫ばれるようになり、企業や組織はいかに労働生産性を上げるかを模索している。しかし、日ごろの取材を通じて感じるのは、働き方改革の対象の約半分は女性であるのに、生産性の低下を招く最大の要因の一つである女性特有の「生理」に対して、企業や社会、女性本人までもがあまりにも無頓着だということ。その結果、生理の困りごとに対する解消法への関心が低いことも、大きな問題点だと感じる。

 まずは、生理が労働生産性とどう関係するのか、から見ていこう。

 生理痛やPMS(月経前症候群)に代表される生理トラブルがあるせいで、生理がある時期は生理がない時期に比べて仕事の生産性が落ちる、と感じている人は67.8%もいる*3)。だが、生理で仕事に影響が出ていても、受診している人は半数*4)だ。

 社会がもっと気にするべきは、生理痛やPMSなどの生理トラブルが、いま話題の「アブセンティーズム」(仕事ができない状態)や、仕事はしているけれど、実際は格段にパフォーマンスが落ちている「プレゼンティーズム」といった労働生産性を落とす代表的な原因であるという事実だ。月経痛とその関連症状による労働損失は、年間4911億円という試算もある*5)

 別の例を挙げる。生理トラブルは、女性の昇進機会を奪う原因にもなる。例えば、生理前に起こるPMS。人によっては、むやみに攻撃的になったり、気分のアップダウンが激しくなったりするという感情面の症状が出るのだが、この「感情をコントロールできない」自分に自信が持てず、昇進のオファーを断った経験がある女性は17%という調査結果もある*6)のだ。

 痛みや気分変調などの生理トラブルは、いま現在の女性の生産性を下げるだけではない。特に注意したいのは生理痛。痛いまま放置していると、その女性の将来の病気や不妊、退職につながる可能性もある。というのも、生理痛がある人は将来、子宮内膜症という不妊の原因になる病気に進行するリスクが2.6倍高くなることがわかっているからだ*7)

 最悪のシナリオは、人材の喪失=離職だ。生理痛⇒子宮内膜症⇒不妊⇒不妊治療⇒仕事との両立が困難⇒退職──という流れは、決して脅し文句ではない。もしも不妊治療を受けることになったなら、治療と仕事を両立できずに退職する人が23%もいるからだ*8)

出所:厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」

 生理トラブルの放置はこれほど大きな損失を招くのだが、女性自身も社会全体も、意外なほどこのことに注目していない。日本では学校でも家庭でも女性の生理に関する教育を受ける機会がほとんどないため、女性も男性も「生理でつらいのは当たり前」と思いこんでいる人が多く、多くの女性は我慢をし、「対処すべき」という考えを持っていないのだ。