昨年来出版界で、老化制御をテーマとした書籍が、多数発刊されているのをご存じでしょうか。背景にあるのは、老化のメカニズムの解明や新たな制御法の可能性といったエイジング研究の急速な進歩(関連企画: ここまで進んだ「老化制御サイエンス」)。個人的な関心もありできるだけ読むようにしていますが、2021年は労作が揃った印象です。「このミステリーがすごい!」ならぬ、「このエイジング本がすごい!2021年版ベスト3」を考えてみました(順不同)。 

 1冊目は、ベストセラーになった新書『生物はなぜ死ぬのか』(講談社現代新書)。生物学者の小林武彦氏の手によるもので、「なぜ、私たちは死ななければならないのか?」という問いに、生物学的アプローチで答えています。「死と老化制御は真逆では?」と心配する必要はありません。テロメア(命の回数券)から細胞老化、老化抑制薬まで、現代エイジングのあらましもしっかりと書かれています。これらを平易に伝えることに成功しているのが、この本の「すごい」ところです。

 2冊目は、世界的な老化研究者である米国ワシントン大学の今井眞一郎氏による『開かれたパンドラの箱 老化・寿命研究の最前線』(朝日新聞出版)。長寿遺伝子と呼ばれるサーチュインの働きや、抗老化効果が期待されるNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)などの発見で重要な役割を果たしてきた氏が、何に着目し、どう研究を進めてきたかを実証的に記した本です。ご自身の研究だけでなく、世界の老化研究の最前線や日本のアカデミアの課題などに触れている部分も読みどころの1つで、「すごい」ところです(関連記事:今井眞一郎ワシントン大教授が語る「NMN、抗老化効果の真実」)。

 3冊目は、類書がないことを「すごい」と捉え、『不老不死ビジネス 神への挑戦 シリコンバレーの静かなる熱狂』(日経ナショナル ジオグラフィック社)を選びしました。2013年、米グーグル社が長寿研究に特化したスタートアップ、キャリコを設立したことをご存じの方も多いでしょう。そのキャリコ誕生から2018~2019年頃までの活動を丹念に追ったノンフィクションです。「不老不死/不老長寿」は、人類が辿り着けるフロンティアになり得るのか――。読後の感想は、分かれるかもしれません。

 「ベスト3」と書きましたが、もう1冊、同率3位として、福岡国際医療福祉大学教授の森望氏による『寿命遺伝子』(講談社ブルーバックス)も挙げておきます。「本書は、さまざまな生き物の研究を土台に、生物学的には『ヒト』ともいわれる私たち自身に起こりつつある『老化』を、最先端の遺伝子研究からみていくものである」(同書「はじめに」より)。学術的な記述も多く、読みこなすには一定の素養が必要となりそうですが、「現在の世界長寿記録として知られるフランスの女性、ジャンヌ・カルマンさんの122歳説(1875年~1997年)に関する疑惑」など、誰かに話したくなるトピックも散りばめられています。やや難解であるにも関わらず薦めたくなるのが、この本の「すごい」ところです。

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