11月29日にアップした「庄子育子が斬る! 行政ウオッチ」では、75歳以上の医療費負担引き上げ議論を取り上げ、記事にした。政府は75歳以上の窓口負担を2022年度から原則2割に引き上げたい考えだが、政局の行方次第では先送りの可能性も十分あるのではという内容だ。過去にも、70~74歳の2割負担の実施が当初の予定から6年も遅れた経緯がある。

 もっとも、2022年以降、団塊の世代が75歳になり始め、医療費の急増が見込まれるのだから、75歳以上の2割負担はもはや待ったなしで、今回ばかりはさすがに速やかに行われるのではとみる向きもあるだろう。筆者としても、75歳以上への2割負担導入は先延ばしにしてはならない課題だととらえている。

 ただ、その実現はテクニカル的にも難しい問題をはらんでいる。

 75歳以上の2割負担導入に関する具体的な制度設計はこの先、厚生労働省を中心に行われる予定だが、政府内では2つの案が浮上しているという。1つは、75歳以上全員を一斉に2割にする案。もう1つは、制度導入後75歳に到達した人から順次2割負担を適用する案だ。後者の段階的に導入する案の場合、70~74歳は現在、原則2割負担で、75歳以降もそれと同じ割合が続くだけなので、負担が増えたと感じにくいとみられている。

 負担増を段階的に行う手法は、かつて70~74歳の負担を1割から2割に引き上げた際にも用いられた。それまでは69歳までの現役世代は収入に関係なく3割負担で、70歳以上は現役並み所得者を除き1割負担だったが、70歳となる誕生日の翌月(各月1日が誕生日の人はその月)の診療から75歳の誕生日を迎える前日までは2割負担となった。

 70~74歳の2割負担の導入は2014年度からスタート。そのため、2014年4月2日以降に70 歳の誕生日を迎える人(誕生日が1944年4月2日以降の人)が2割負担の適用となり、一方で2014年4月1日までに70歳の誕生日を迎えた人(誕生日が1944年4月1日までの人)は1割に据え置かれた。

 つまり1944年4月1日生まれと翌2日生まれでは明暗が分かれたことになる。とはいえ、この制度では75歳になれば原則1割負担になるので、たった1日の誕生日の違いによる負担割合の格差は最大で5年にとどまった。

 それに対し、今回政府内で浮上している、75歳以上の2割負担への引き上げを同じように段階的に導入した場合はどうなるのか。2022年度から新制度がスタートすると仮定した場合、2022年4月2日以降に75歳の誕生日を迎える人(誕生日が1947年4月2日以降の人)が2割負担の適用となり、2022年4月1日までに75歳の誕生日を迎えた人(誕生日が1947年4月1日までの人)は1割負担のままということになる。

 もうお分かりだと思うが、これでは例えばたった1日の誕生日の違い、具体的には1947年4月1日生まれと翌2日生まれでは、医療費の負担割合が2倍違うということが死ぬまで続くことになる。人生100年時代を迎える中、その不公平感は相当なものだ。

 75歳以上の原則2割負担を導入する場合、既に75歳に到達している人の原則1割負担は据え置きのままでいいのかはおそらく議論の俎上に載ることは間違いなく、その解決策を図るのはまた至難の業だろう。そう考えると、75歳以上2割負担実現のハードルはやはりかなり高いわけだが、厚労省からは何らかの妙案が出てくるはずと筆者は期待している。


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