日経BP 総合研究所は「木材ビジネス最前線」というレポートを11月30日に発行しました。森林や木材、木造建築に関する業界ごとのビジネスの変化を、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・企業統治)の視点を交え、独自に調査分析したものです。その内容の一部を紹介します。

 森林には木材利用だけでなく、健康増進やレクリエーションの場、土砂災害の防止、洪水の緩和、水資源の貯留といった多面的な機能があります。気候変動に伴って同時多発化・激甚化するゲリラ豪雨や大雨などによる災害を防ぐ効果も期待されています。そして近年注目されているのが、カーボンニュートラルにおける「吸収源」としての役割です。

 2020年10月、日本政府は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。ここでいう「全体としてゼロにする」とは、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」を指します。

 温暖化ガスの排出を完全にゼロにすることは、現実的に難しい面があります。そのため、残った排出分については同じ量を「吸収」または「除去」することで、差し引きゼロ、正味ゼロ(ネットゼロ)にします。これがカーボンニュートラルの考え方です。

 森林の樹木は、成長の過程で光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素を貯蔵します。その樹木からつくられる木材は燃やさない限り、炭素を貯蔵し続けます。

 木材を建物などに利用すれば、炭素が長期間固定できることになります。例えば住宅の場合、木造は鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて約4倍の炭素を貯蔵できるといわれています。

 また木材は、鉄やコンクリートなどの材料に比べて製造や加工に要するエネルギーが少なく済みます。住宅の建設に用いられる材料について、製造時における炭素の放出量を比較すると、木造は鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて大幅に少なくなります。

 日本でカーボンニュートラルを実現するためには、豊富な森林資源から産出される国産材の使用量を増やし、より長期的に利用する必要があります。そして、これまで鉄骨造や鉄筋コンクリート造でつくられることが多かった建物を木造とすれば、炭素の貯蔵や二酸化炭素の排出削減がさらに見込めるようになります。

 木造化や木質化のなされた空間が身体・心理にどのような影響を与え、どのような経済効果をもたらすかなどを実証する試みも始まっています。カーボンニュートラルを実現する2050年には、木材がより身近になっているはずです。

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