2021年を迎えた。本年は、老化制御の様々な手法が研究段階から、社会実装に向けて、加速する1年だと予想している。

 大きな進歩を見せているのが、体内の補酵素NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の量をめぐる老化制御の研究だ。10年ほど前に、長寿遺伝子のサーチュインが話題になったが、体内のNADがサーチュイン遺伝子の活性化を担うことがわかってきた。またNADはミトコンドリアでのエネルギー生産にも欠かせない。そして、DNA損傷の修復も担う。そのため、「抗老化ビタミン」と定義する研究者もいるほどだ。実際、NADはビタミンB3から体内で多段階で作られる補酵素なので、ビタミンという呼称も納得できる。

 このNADは加齢とともに減少する。ビタミンB3の摂取で増やしたいところだが、多段階でNADを作る過程の酵素活性も加齢とともに落ちやすい。そこで、ここ数年、NADの前駆体であるサプリメント成分NMN(ナイアシンモノヌクレオチド)の摂取に注目が集まっている。マウスで、NMNの摂取でNAD量を回復させることが可能と分かり、人への摂取による効果検証も進んできた。大阪大学のグループでは、身体状態が虚弱化しているフレイルの男性にNMNを1日250mg、6カ月投与した臨床試験を行い、NMN投与群で歩行速度と握力が改善する傾向を昨年11月に確認した。

 NADをめぐって、もう一つの方向性で研究が進んでいるのが、体内でNADを作る酵素であるNAMPT(ナンピィーティー;ニコチンアミド・ホスホリボシルトランスフェラーゼ)を増やすというアプローチだ。有酸素運動でも、レジスタンス運動(筋トレ)でも増えることが証明されている。有酸素運動では最大酸素量の70~75%強度の有酸素運動を週3~4回、週当たり180分を12週間のプログラムでNAMPTの量が増えることが証明された。筋トレでは、上半身と下半身合わせて1回45分を週に3回、12週間のプログラムでNAMPTが増えることが証明されている。これまで有酸素運動や筋トレについては、心臓血管の老化防止や、筋力低下による老化防止という視点で、推奨されてきたが、より本質的に体内の抗老化ビタミンを枯渇させないためにも、行うべきだというエビデンスが見えてきたことになる。