明けましておめでとうございます。

 昨年5月に始動したBeyond Health。おかげさまで、アクセスやメルマガ会員は順調に伸び続けており、公式Facebookページでも連日たくさんのいいね!・シェアをいただいています。多くのみなさまのご愛読とご支援をいただき、誠にありがとうございました。

 さて、新年最初の記事となる本稿。2020年、筆者が気になっている3つのテーマについて触れていこうと思います。

「5G」は新たなビジネスモデルを生みだすキッカケに

 2020年、次世代通信規格「5G」の商用サービスが国内で本格始動します。医療・ヘルスケア分野にも大きなインパクトをもたらすトピックです。

 既に、さまざまな実証が展開されています。その一つが、NTTドコモがコンセプトを披露している「モバイルSCOT」。災害地域などへ機動的に移動できるコンテナ車と、病院の手術室を結び、遠隔手術支援を実現しようとするものです(関連記事)

コンテナ車に搭載する「モバイルSCOT」のイメージ(写真:Beyond Healthが撮影)

 元々、手術中に使う画像診断装置や医療機器を連携させ、医局に設置した“戦略デスク”からリアルタイムに適切な指示を送るというコンセプトで開発されたスマート治療室「SCOT」。戦略デスクと手術室の情報のやりとりは現在は有線ですが、ここに5Gを用いれば遠隔での手術支援が可能になり、さらには戦略デスクそのものを(コンテナ車で)柔軟に移動させられるというわけです。

 フィリップス・ジャパンが伊那市(長野県)と実証を開始した「ヘルスケアモビリティ」。次世代移動サービスであるMaaS(Mobility as a Service)を活用し、ヘルスケアサービスを受けられる拠点を移動可能にすることを目指しています。この取り組みでも、画像やデータの円滑な送受信に加え、自動運転・自動運行・AIでの運行管理などに5Gを活用するシナリオを明らかにしています(関連記事)

 こうした遠隔手術支援やヘルスケアモビリティの他にも、オンライン診療、AR/VRを活用した医療・介護ソリューション、多様なセンサー(IoT)を用いたヘルスケアモニタリングなど、5Gによって多くの取り組みが高度化する可能性が議論されています(関連記事)。ただし、既存のサービス・ソリューションの高度化だけが5Gのインパクトではないでしよう。

 5Gのインパクトとしてもう一つ見逃せないのは、これまでに存在しなかった新たなビジネスモデルを生みだすツールになる可能性があるということ。筆者がかねて展望してきた、社会のあらゆる場が医療・ヘルスケアの中心地になる「ソーシャルホスピタル」の世界も、5Gによってより現実味を帯びてきます(関連記事)

 まさに5Gは、ヘルスケア領域に新たな価値を創造し、スタートアップや新規事業部門、異業種企業などBeyond Healthがフォーカスしている読者にも密接に関係してくるテーマだと考えています。

がん早期スクリーニングは“正しく”社会に実装を

 2020年1月、HIROTSUバイオサイエンスが、がん検査サービス「N-NOSE」の実用化を開始します。地球上にありふれた生物「線虫」を活用して、尿からがんの有無を判別するサービスです(関連記事)

N-NOSEでは線虫を活用する(写真:諸石 信)

 東芝は昨年11月に、血液1滴から13種類のがんを99%の精度で2時間以内に検出する技術の開発を発表しました。2020年から実証試験を実施するとしています(関連記事)

 こうした、がんの早期スクリーニング技術が社会にどう受け入れられていくのか。2020年はその重要な年になりそうです。

 HIROTSUバイオサイエンスのN-NOSEは、15種類のがんの「どれかがある」というリスクを判定できます。東芝が発表した技術でも同じく、13種類のがんのいずれかに罹患している可能性があることをスクリーニングします。

 つまり、がん種やステージは判定できません注)。この点をどうとらえるのか。立場によっては、負の側面も含めて様々な意見が出ているのは事実です。なお、HIROTSUバイオサイエンスは、あくまで本来受けるべきがん検診の受診率の低さを解消するための「1次スクリーニング」(同社)としての簡便・安価な検査サービスだと位置付けています(関連記事)

注)ただし、両社ともに、次のステップとしてがん種を特定できる技術の開発を検討している。例えば、HIROTSUバイオサイエンスは、すい臓がんをターゲットにした「特殊線虫」を早ければ2022年に実用化するとしている。

 こうした技術の特性が正しく理解され、正しく活用され、既存のがん検診のインフラと正しく連携されていけば、画期的な技術であることは間違いありません。その議論を深め、“正しく”社会に実装していくことは、2020年の大きなテーマなのではないかと考えています。

テック発の可能性はあらゆる角度から提示されてきた一方で…

 最後のテーマは、少し視点を変えて「倫理」。

 データ活用を前提とする流れが、医療・ヘルスケアにもどんどん波及してきています。Beyond Healthでも、個人データ(PHR)の一元管理や、診療データの利活用、ゲノムデータの活用戦略など、さまざまな取り組みを紹介してきました。AI(人工知能)を活用したデータ解析についても同様です。

 数年前と比べると、こうした事例は枚挙にいとまがありません。テクノロジーを活用した多くの可能性があらゆる角度から提示されてきた一方で、同時にまだまだ議論が足りないのが「倫理」についてです。AIを医療の現場などヘルスケア領域に受け入れるためのガイドラインや指針、データを活用する上でのリテラシーやセキュリティー、あるいはゲノムデータによる差別をどう防止するかまで、様々な課題が横たわっています。

 Beyond Healthは、本Webメディアでの情報発信を中核に、「円卓会議」「セミナー/フォーラム」「アワード/コンテスト」「未来年表」など複数のアクティビティを展開し、それらを連携させていくビジネスプラットフォームです。2020年はその機能をより充実させていく予定です。

 本稿で触れたテーマの一部は、本Webメディアで引き続き情報発信していくことはもちろん、こうしたプラットフォームの各機能を活用しながら読者の皆さまや有識者などのご意見も交え議論を深めていきたいと考えています。

 最後になりましたが、2020年もBeyond Healthを何卒よろしくお願いいたします。

(タイトル部のImage:arkgarden -stock.adobe.com)