数多くの課題を前に厚労省は?

 さて、そこから何が起きているのか。目下、過熱しているのは、医療崩壊の“元凶”探しと言っていいだろう。

 増え続ける感染者に最前線で対応する医療従事者の負担は増しており、瀬戸際の状態。日医はそれを声高に訴えるものの、冬場に感染者が急増するのは最初から分かり切っていたことで、それなのになぜ対策を打たなかったのかと疑問視する声が方々から噴出しているのだ。

 その際、必ず「枕詞」がつく。「日本は人口当たりの病床数が先進国の中でずば抜けて多い。一方で、欧米に比べて日本の感染者、死者は桁違いで少ない。それでどうして医療崩壊が起きるのか」と。

 怒りの矛先が向いているのは、もっぱら政府や厚生労働省、都道府県、そして日医だ。

 厚労省のまとめでは、昨年11月末時点で全国約8000病院のうち、新型コロナ患者の受け入れ可能病院は2割強の約1700病院。都道府県がコロナ患者用ベッドとして確保した病床は最大計約2万8千床で、一般病床と感染症病床を合わせた約90万床のわずか3%に過ぎない。感染者の受け入れは公立・公的病院に集中し、民間病院では人材不足や経営負担などの影響もあって受け入れがなかなか進まない。

 メディアを通じてそんな状況が白日の下にさらされると、「民間病院が協力しないから悪い」説が徐々にまかり通るようになった。そこから、「行政が強権発動して、コロナ対応をしていない医療機関に強制的に患者を受け入れさせるようにすべき。その法整備してこなかったのは政府や厚労省の怠慢」「都道府県も黙ってその状況を見ているだけなのは問題」「日医に至っては、医療体制の立て直しを図るため、全国の会員に呼びかけてコロナへの協力体制を敷くべきところ、医療崩壊の危機をあおるだけで何もしていない」――などの見方が渦巻くようになった。怒りや不信感の大合唱といったところだ。

 こうした医療崩壊の“元凶”探しの過熱ぶりを筆者は冷ややかに見ている。誰が悪いわけでもないからというのではない。むしろその逆で、いろんなところに問題は大ありで、複合要因が複雑に絡み合っているから、最も悪い元凶を探しても意味はないと感じているのだ。

 数多くの課題が立ちはだかるのは、厚労省も承知の上。そもそも現状打破の方策は地域の実情などに応じてまちまちで、これさえやれば大丈夫というものはない。したがって、考えられる施策を幅広に繰り出すしかなく、昨年12月25日には「感染拡大に伴う入院患者増加に対応するための医療提供体制パッケージ」を決定し、一般医療を確保しつつ新型コロナ感染患者への医療体制を拡充するため、「入院受入医療機関への緊急支援」「確保病床の最大限の活用」など6項目をまとめた。ここで詳述はしないが、その中身は多岐にわたっている。

 それをどう生かすかは、自治体や医療現場の腕の見せどころ。日医傘下の都道府県医師会や郡市区医師会がイニシアティブを取って進めてもいい内容だ。