2022年度診療報酬改定率の決定に合わせて、一定の期間、医療機関を受診しなくても調剤薬局で繰り返し使える「リフィル処方箋」の導入が決まった。次期改定をめぐっては、医師らの技術料などにあたる本体部分の改定率がプラス0.43%で決着。岸田文雄首相が公約した看護師らの処遇改善と、菅義偉前政権が打ち出した不妊治療の保険適用で上乗せが必要となる中、政府はリフィル処方箋を取り入れて医療費の効率化を図るなどして、引き上げ幅を抑え込んだ格好だ。

 リフィル処方箋の制度化議論は10年以上前から登場するも、医療機関への通院回数が減ることを危惧する日本医師会(日医)の強い反発で一向に実現せずじまい。その経緯を見てきた筆者にとって、今回の展開は驚きでもあった。ただ、リフィル処方箋の導入を受け入れなければ、看護師らの賃上げと不妊治療の保険適用以外に、診療報酬の引き上げに回せる改定財源の確保がままならない。日医としてはそんな判断も働き、政府提案を受け入れたのだろう。

 リフィル処方箋の期限や対象となる症状など細かな算定要件は今後、厚労相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」(中医協)で詰められる。その中身次第で解禁のインパクト度が変わるわけだが、中医協には日医選出の委員が3人いることから、医療機関のダメージが少なくて済む見直しにとどまる公算が大きい。

 だが、楽観視していられないのも確か。今回の見直しが「蟻の一穴」となる可能性は十分ある。

 思い起こすのは、後発医薬品の使用促進のための処方箋様式の変更だ。厚労省は、2000 年代に入ってから医療費削減のために、後発医薬品の普及策を各種講じてきたものの、先発医薬品に対する医療関係者や患者の信頼感は厚く、切り替えはなかなか進まなかった。そこで処方箋様式を変更し、後発医薬品への変更可欄を新設することを企てるも、日医が猛反発。それでも小泉純一郎政権下で診療報酬本体の大幅引き下げが決まった2006年度の診療報酬改定で、このプランをのませ、その後も後発医薬品により変更しやすくするよう記載様式を何段階かにわたって改変した。他にもいくつか診療報酬上の評価が組み合わさり、今では後発医薬品の使用割合が80%を超える。

 欧米などで既に実績があるリフィル処方箋も同様の経過をたどるとみられ、当初は静かに進むが、いずれ本格導入にかじをきるのは間違いないだろう。