実を挙げる仕掛けを盛り込む厚労省

 こうした年度途中での制度変更は珍しい。首相の並々ならぬ強い意向に従い、厚労省が助成の拡充をとにかく急いだという構図だ。ただ、同省は実を挙げる仕掛けを盛り込むことを忘れていなかった。

 厚労省は不妊治療にかかる費用の助成について、新たな条件を加える方向だという。現在、助成対象の指定医療機関になるには、事業実施主体の長である都道府県知事が定める施設や設備・人員の基準を満たす必要がある。そうした指定要件のクリアに加え、どうやら自院の診療内容や治療費、治療実績などの情報開示も求めるようだ。具体的には、医療機関がそれらの情報を自治体に報告、すると都道府県がホームページ上で一覧にして公開する。

 この見直しの意義は大きい。それはなぜか。

 不妊治療を巡っては、不妊の原因を調べる検査や一部の治療を除いて保険が適用されず、人工授精や体外受精、顕微授精はいずれも自由診療で行われている。医療機関ごと治療方法や方針は異なり、設定する自由診療の価格もまちまちだ。実際に厚労省が昨秋実施した実態調査の中間報告では、1回あたりの体外受精にかかった治療費は16万円から98万円と差が大きかった。治療の質にも医療機関により差があるといわれる。

 ばらつきが大きい中、どの医療機関でどんな治療が受けられて、実績はどうなのかを調べるのは、患者側が自力で行うしかなく、多くはインターネットの口コミなどを頼りにせざるを得ないのが実態だ。

 そんな中、不妊治療の公費助成に当たり、規定項目を報告しない医療機関は、助成対象の指定医療機関として認めないという条件を課すことで、情報の開示が進み、患者にとっては医療機関の選択がしやすくなることが期待される。

 そして厚労省はその先もにらんでいる。情報開示の促進により、自由診療で実態が見えにくかった不妊治療の透明性が高まれば、保険適用に向けた具体的な制度設計もしやすくなるとみているのだ。

 実は、不妊治療の保険適用話は1998年ごろにも取り沙汰され、国会で議論されたこともあった。だが、健康保険の財政上の問題などからとん挫。結局、保険適用は見送られ、代わりに2004年に治療費を助成する制度が創設された。以来、今に至るまで不妊治療の手法は日々進歩し、治療の選択肢は広がった。国内未承認の海外の最先端の治療技術や薬なども多く使われている。自由診療ならではの発展を遂げてきたわけだ。

 ところが、そんな不妊治療を2022年4月にも保険適用とする。国の財政事情を踏まえれば、保険の対象範囲は限定的にとどめざるを得ない。当然、できる限り費用対効果に優れ、安全性も確立した治療法を最優先したいところ。厚労省は保険適用にふさわしい診療行為をあぶり出すためにも、今般、不妊治療を行っている医療機関の情報開示が進む施策を打ったといえる。