医療サービスの公定価格である診療報酬について、4月に行われる改定の内容が決まった。その議論の過程では、安価な後発医薬品の使用促進を狙って厚生労働省が打ち出した、ある取り組みへの評価が見送られた。

 消えたのは、「フォーミュラリー」の導入。フォーミュラリーは医学的な妥当性を前提に、経済性にも優れた薬剤の処方を推進する指針で、いわば「お薦め薬のリスト」に当たる。欧米先進諸国では既に一般的に使われ、遅ればせながら日本でもここへ来て一部の地域や病院などの単位で作成・活用の動きが出始めていた。

 当初、フォーミュラリーの評価には追い風も吹いていた。だが、結局は幻に。その裏事情を探ると、厚労省の勇み足ぶりが際立つ格好となった。

 厚労省がフォーミュラリーの評価を次期診療報酬改定の検討項目の一つとして中央社会保険医療協議会(中医協)に掲げたのは2019年3月。政府は現在、後発医薬品の使用目標を「2020年9月までに80%以上」と定めており、70%台で足踏み状態が続いている状況を何とか打破しようとしての提案だった。

 その後、政府が2019年6月に閣議決定した骨太方針に経済性を加味した処方の推進が盛り込まれ、これに勢いづいた厚労省は中医協でフォーミュラリー評価の議論を本格化させた。

 ところが、フォーミュラリーを作成して活用しているケースを評価してはどうかとの提案に対し、診療側の委員は反対を貫いた。中でも真っ向から強く反発して見せたのは日本医師会からの委員。一般に、医師の間では、フォーミュラリーが導入されれば、処方できる医薬品が制限されるとの懸念が根強い。そのため、「処方権の侵害につながりかねない」とのけん制に始まり、「診療報酬による評価にはなじまない」「仮にフォーミュラリーの採用薬の供給がストップしたら、代替薬の用立てが急に行えないなどの弊害がある」など反論を並べ立てた。

 次第に分が悪くなるばかりの厚労省。それでも、昨年12月には、全国86カ所ある、大学病院など高度な医療を提供する「特定機能病院」に限って、評価を導入することを提案した。だが、賛成したのは医療費の削減効果を期待する、支払側の健康保険組合連合会からの委員のみ。ついには、厚労省は白旗を挙げ、年明けにはフォーミュラリーを次期改定の評価検討項目から外した。