この4月からの2021年度介護報酬改定の内容が明らかになった。昨年末に政府が決定した改定率はプラス0.70% 。うち0.05%分は新型コロナウイルス感染症対策にかかる費用として計上され、全サービスの基本報酬を2021年9月末まで0.1%上乗せする。

 改定のポイントは幾つかあるが、最大の目玉といえるのが、自立支援・重度化防止に向けたデータの収集・活用による「科学的介護」の推進。ヘルスケアベンチャーをはじめとする介護系ソリューション提供者には必見の内容で、介護大転換の時代がやってくるのは間違いない。

「経験と勘」から「データ分析」へ

 科学的介護は、「科学的に裏付けられた介護」との意味。Aという状態の人には、Bという介入が効果的だというエビデンスを構築することで、利用者の状態に合わせた介護サービスを提供することを目的としている。

 介護保険制度がスタートして以来、20年以上が経過するが、医療分野に比べて介護分野におけるデータ整備・活用は遅れ、エビデンスに基づく介護サービスの「標準化」は進んでいない。実際、介護の必要な利用者に対し、どんな介護サービスを提供するかは、各事業所によって異なり、多くの現場で経営者やベテランスタッフの「経験と勘」に頼ってきた。

 だが、超高齢社会が進み、社会保障の中でも介護保険は今後、最も給付の伸びが大きいと見込まれ、サービス提供の効率化はいまや待ったなしだ。そこで政府はここへ来て、データ分析を通じた科学に裏付けられた介護を実践する方向へ舵をきった。

 具体策を担う厚生労働省は、まずは科学的介護を実現する上で欠かせない、介護のエビデンスづくりのための新たなデータベースとして、「CHASE」を構築。2020年5月から試験的な運用を開始した。

 CHASEは【Care】【Health】【Status】【Events】の頭文字を組み合わせた造語で、介護支援専門員(ケアマネージャー)が作成するアセスメントなどのデータを集め、「状態」(血圧、日常生活動作、認知機能など)、「介入」(栄養指導、介助による入浴など)、「イベント」(転倒、肺炎等の罹患、施設からの退所など)の3種類に類型化して分析可能にする。介護領域のデータベースとしては他に、保険給付についての情報を蓄積する「介護保険総合データベース」と、リハビリテーションに関する情報を蓄積する「VISIT(monitoring & eValuation for rehabIlitation ServIces for long-Term care)」が存在しているが、それらでは足りない情報を収集するのがCHASEの役割だ。

 こうしてCHASEのシステムを作ったところで、その活用を進めるべく、厚労省は2021年度介護報酬改定において、介護サービスの利用者情報の提供などを条件とする加算を新設したのだった。なお、この見直しに伴い、CHASEとVISITは2021年4月から一体的に運用されることとなり、「LIFE」と名称変更されることになった。LIFEは、Long-term care Information system For Evidenceの略で、訳すと「科学的介護情報システム」となる。