強烈なバッシングにさらされてきた歴史がそうさせた?

 一方で、確かに厚労省の対応が後手に回った点も否めない。かえって不安をあおると考えたのか、隣国で起きている状況の詳しい説明や、水際対策の真の狙いや個人個人の感染防御策、感染した場合の症状や対応策などに対する積極的な啓発、分かりやすい説明を尽くしてきたとはいえない。そんな情報不足のまま、期待を裏切られた格好となった国民は不安に駆られたからこそ、専用センターに電話が殺到してしまったことになる。

 ただ、汚名返上とばかりに、厚労省は、日々対応に奮闘中だ。メディアには一切公開されていないが、現在は省を挙げての部局横断の特命チームが約100人体制で組織され、体育館ほどの広さがある同省講堂で、基本的に24時間対応で業務に当たっている。100人は仕事の中身に応じて「広報班」「対策班」「薬品確保班」「クルーズ班」「技術総括班」など10班ほどに分かれているという。特筆すべきは、その特命チームには、厚労省から他の機関に出向中の人たちも含まれている点。人手が足らないため、「厚労省参与」の肩書などで急きょ呼び戻しをかけて臨時的に働いてもらっているのだ。まさに総力戦と言っていい。

 それでも国民の不信感を募らせている情報不足が解消する気配はない。というのも、かみくだいた解説を加えることを厚労省は極端に嫌う。分かりやすくしようと思うと、どうしても正確性が甘くなるほか、分かりやすくしたら、変に突っ込まれたり、反論されたりする機会が増えることにもなりかねない。そんなリスクを取ることには非常に敏感で、できる限り責任を負わないようにする習性が染みついてしまっているのだ。他の官公庁と異なり、数々の薬害事件、幹部官僚や中央社会保険医療協議会委員による汚職事件、社会保障の改革を巡って強烈なバッシングにさらされてきたり政争の具にされてきた過去がそうさせたのかもしれない。

 「悪気はなく無意識のうちに、吟味して厳選された限られた情報しか出さないのが厚労省の専売特許」――。かつて同省幹部を務め、今は組織を離れたさる人物もこう口にしていた。とはいえ、いつまでもこのままの習性を抜け出せずにいるのはあまりにももったいない。厚労省講堂での職員挙げての24時間対応が功を奏し、感染が終息に向かい汚名返上なるか、固唾を呑んで見守りたい。  

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