3月24日、診療報酬の内容を議論する中央社会保険医療協議会(厚生労働大臣の諮問機関)の場で、興味深いやり取りがあった。この日、厚労省は前回2020年度診療報酬改定の効果を検証する目的で実施した調査の結果について報告。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、医療機関には感染リスクを恐れて“受診控え”をする人が増えているとされるが、同調査にはその実態が垣間見える内容が含まれており、結果を巡って支払側と診療側で正反対の見解を示したのだ。

 中味はこういうことだ。前回改定では「かかりつけ医機能」を持つ医療機関に対する評価が拡充。そうした医療機関を対象に、厚労省が1回目の緊急事態宣言が発令された昨年4月1日から5月31日にかけての外来での対応ならびに患者の健康影響について尋ねたところ、次の結果が得られた。

 調査に回答した700施設のうち、患者の受療行動の変化によって何らかの対応を行ったのは618施設に上った。施設側にはそれぞれどんな対応を行ったかとその患者の規模感を聞いており、規模感について「かなりいた」と回答した割合が最も多かった対応は、「処方を長期化した」(30.4%)だった。次いで、「患者の希望があり受診間隔を伸ばした」(23.1%)、「検査・処置を中断・延期した」(15.2%)、「患者の希望に応じて電話・ICTを用いた診察を実施した」(7.8%)、「通常の対応から変更し、日時を指定した完全予約制による対面での診療を実施した」(5.0%)の順。

 そして、興味深いのはここからだ。それぞれの対応別に患者の健康影響について尋ねたところ、健康への影響が「ほとんどなかった」との回答はいずれも3割程度で、7割は多かれ少なかれ健康に影響があった。その影響の中味としては、救急外来を受診したり、入院加療が必要となったりするケースなどがみられた(詳細は下図参照)。

(出所:2021年3月24日 中央社会保険医療協議会資料)
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(出所:2021年3月24日 中央社会保険医療協議会資料)

 さて、この結果を巡り、同日の中医協では支払側と診療側で意見が割れた。支払側は、受診間隔を延長したり処方を長期化したりした結果、およそ7割が「ほとんど影響がない」と回答したことに着目。「今後、医療とのかかわり方をどうするかを検証する上で、もっと深掘りした調査が必要」(健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏)と、厚労省に注文をつけた。

 すると、診療側は反発。「調査結果を見る限り、受診期間をどの程度伸ばしたかは示されていない。おそらく短期だと思われるが、そんな中、『影響がかなりあった』と『多少あった』が1割以上を占めていることの方が重要」(日本医師会常任理事の松本吉郎氏)だとして、健康に何らかの影響があった3割の詳細な分析を求めた。

 ただし、この日の同テーマに関する議論はそこまで。支払側と診療側、両者の言い分に対し、厚労省から特段コメントはなかった。