7月の投開票が予定される参議院選挙まで3カ月。政権与党の自民党は選挙の公約づくりをスタートさせるとともに、目下、組織票固めに注力している。

 選挙と言えば、筆者は以前、厚生労働省のさる官僚から聞いたこんな話を思い出す。

 「有権者、政治家、官僚は、『ジャンケン』と形容されることがある。有権者(特に支持者)は政治家に強く、政治家は官僚に強く、官僚は有権者(特に業界)に強い。そこで、有権者は政治家を経由して官僚に頼み事をし、政治家も必死に応える。他方で、官僚も何らかの政策への支持に政治家を動員したいとき、例えば診療報酬引き下げ反対や非課税存続などのため、有権者(この場合は団体など)を経由して政治家に働きかける。特に選挙前後となると、これらの動きが活発化する」──。

 結局、この三者がグルグルと関わり合っているので、さも「ジャンケン」のごとく、ということらしい。

 昨年10月には衆院の解散総選挙が行われたが、選挙前には度重なる補正予算でコロナ対策費の多くが医療に振り向けられたところ。そして選挙後の昨年末に政府が決定した2022年度の診療報酬改定率は、「本体部分+0.43%」だった。財務省はコロナ禍でも躊躇なく本体の引き下げを求める一方、厚労省は医療提供体制の強化が不可欠として引き上げを主張。両者真っ向から対立するも、最後は微増で決着した。今夏の参院選を案じ、岸田文雄首相が自民党の有力支持団体である日本医師会に一定の配慮をした結果とみられている。

 これらは確かに「有権者、特に支持者は政治家に強い」を物語るエピソードである。

 ではこの先はどうか。気になるのは、首相の肝煎りで発足した政府の諮問機関「デジタル臨時行政調査会(デジタル臨調)」の議論の行方だ。臨調は現在、デジタル化の推進に向けて立ちはだかる規制の一括的な見直しプランをまとめる作業に当たっており、政府はその中味を夏に策定する骨太の方針や成長戦略に反映させる。

 デジタル臨調の議論では、少子高齢化などの社会的な課題への対応のため、「健康・医療・介護」の領域を重点分野として位置づけており、デジタル化を邪魔する規制は大胆に見直すべきとの方向で話が進んでいる。

 ただ、医療界にしてみると、新しい医療のあり方と人手不足の代替策としてのデジタル化の推進にはおおむね賛同するものの、医療現場でのIT利用が必須となって経費がかさんだり、オンラインの各種ヘルスケアサービスが普及して自分たちの仕事がすっかり脅かされてしまったりするような状況が起きるのは避けたいところ。業界にとって経営的に不利益を被る規制の見直しであれば、到底認められないとして日本医師会が反発することは容易に想像できる。となると、政府はどんな判断を下すのか。

 筆者はおそらく、骨太の方針や成長戦略に盛り込む内容が、デジタル臨調の議論よりも少し後退する可能性があるのではとみているが、実際どうなるのか行方を注視したい。

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