猛威を振るい続ける新型コロナウイルス感染。影響は各所に及び、安倍政権の看板政策である全世代型社会保障改革の行方にも黄信号がともり始めた。

 子どもから高齢者まで、誰もが安心できる社会保障制度を検討する場として、政府の「全世代型社会保障検討会議」が発足したのは2019年9月。安倍晋三首相が議長を務め、関係閣僚や民間有識者らがメンバーとなった(関連記事)。昨年12月には年金・医療・介護・労働の各分野の制度改革の方向性を示した中間報告を公表。「人生100年時代」を視野に、高齢者の就労促進などによって社会保障の「支え手を増やす」ことと、経済力があれば年齢を問わず相応の負担をしてもらう「応能負担」を2本柱として打ち出した。

 年が明けると、首相は年頭の記者会見で、全世代型社会保障改革を「本年、最大のチャレンジ」と掲げ、改革の実現に全力で取り組む考えを強調した。

 そのまま何事もなく進めば、全世代型社会保障改革を巡っては次のような歩みとなる予定だった。1月以降、厚生労働大臣の諮問機関である「社会保障審議会」で医療制度改革の詳細な議論を開始。労働や年金、介護に関する改革関連法案を今年の通常国会に提出して成立を目指す。その後、6月をめどに検討会議が最終報告をまとめ、それを反映して政府の「骨太方針」に、高齢者の負担増などを柱とする医療制度の改革案を明記。秋の臨時国会もしくは来年の通常国会に医療の改革関連法を提出して成立にこぎつけたら、2022年度に施行する(表1)。

表1●当初想定された全世代型社会保障改革に向けたスケジュール(編集部まとめ)

 2022年は人口の多い団塊の世代(1947~49年生まれ)が75歳以上になり始める年。政府推計では、医療費は2018年度の約43兆円から2025年度には54兆円に膨らむ見通しで、放置すれば、現役世代に負担が重くのしかかる。だからこそ首相は医療費の負担増に責任を持ち、改革の断行を決意したわけだ。もっとも、その裏には、来年9月までの自民党総裁任期を見据え、自らのレガシー(政治的功績)にしたい思いがあるようにも映る。