政府の「医療機器基本計画」がまもなく改定される。同計画は、医療機器産業の成長を後押しし、国際展開を進めるために、関係省庁の各種施策とその工程表、医療機器関係者が取り組むべき事項をまとめたもの。医療機器政策に特化した政府初の基本計画として、2016年5月に閣議された。当時の安倍政権は成長戦略で医療機器を成長産業の一つと位置づけており、計画の遂行を通じて、国内の医療機器産業を経済のけん引役とすることを狙ったわけだ。

 以来、5年以上が経過。その間、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大や、プログラム医療機器の中でも患者自身が直接操作して治療をサポートするといった新たなカテゴリーの機器類が登場するなど、医療機器産業を取り巻く環境は変化した。そうした状況を踏まえ、政府は基本計画の改定を決め、昨年5月から厚生労働省の下に設置した検討会で、その中身を詰める作業を進めてきた。

 1年かけた議論の末、今年4月19日に改定案がとりまとめられたところ。今後、文言修正などを経て、5月中には第2期基本計画として閣議決定される見込みとなっている。

 新計画では、中長期的な目標として、(1)医療機器研究開発の中心地としての我が国の地位の確立、(2)革新的な医療機器が世界に先駆けて我が国に上市される魅力的な環境の構築、(3)あらゆる状況下での国民に必要な医療機器へのアクセシビリティの確立──の三つのビジョンを設定。そのうえで、短期的な目標として5年後に達成するべきマイルストーンを定め、それを実現するための具体的な施策を列挙した。ここではその詳細を挙げないが、全体を通じて国として「人材」「場所」「資金」「情報」が確保できる環境整備に注力する方向だ。

 特に開発支援を強化する重点領域としては、(1)日常生活における健康無関心層の疾病予防、重症化予防に資する医療機器、(2)予後改善につながる診断の一層の早期化に資する医療機器、(3)臨床的なアウトカムの最大化に資する個別化医療に向けた診断と治療が一体化した医療機器、(4)高齢者等の身体機能の補完・向上に関する医療機器、(5)医療従事者の業務の効率化・負担軽減に資する医療機器──の5分野を明示した(下図)。

第2期医療機器基本計画における重点5分野(案)(出所:厚生労働省)
第2期医療機器基本計画における重点5分野(案)(出所:厚生労働省)
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 第1期基本計画では、日本企業が技術を持ち国内外での需要増が見込まれる手術支援ロボットシステムや人工組織・人工臓器、体への負担が少ない「低侵襲医療」などを重点分野として定め、研究開発の活性化を進めた。各分野の優れた技術シーズ・研究シーズをさらに発展させていく、いわゆる「シーズプッシュ型」の開発支援だ。だが、新計画では、前述の通り、環境の変化も踏まえ、現行の社会課題を整理する中、それらの課題解決につながる技術分野に着目して、「ニーズプル型」で研究開発を促進することとした。

 日本は、超高齢化社会を世界でも早い段階で迎えるなど、今後世界が迎える課題に最初に直面している。そうしたことからもニーズプル型で医療機器の開発を進めれば、広く医療機器産業の成長の後押しにつながると言っていいだろう。

 もっとも、計画はいかに実践につなげられるかが鍵。リニューアルされる医療機器基本計画において医療機器産業の成長に向けた国のお膳立ては第1期より手厚くなるが、それをチャンスと見てどれだけの企業がアクションをとるのかで、結果は大きく変わってくる。計画が絵にかいた餅で終わってしまう可能性もあるだけに、この先、厚労省をはじめとする関係省庁の手腕も問われることになる。

(タイトル部のImage:kichigin19-stock.adobe.com)