“作られた”薬剤師不足

 調査結果を待つまでもなく、国際比較でみた場合、日本の薬剤師数は圧倒的に多い。経済協力開発機構(OECD)の最新のデータによると、OECD加盟諸国の中で、人口1000人当たりの薬剤師数は日本が断トツトップの1.9人。しかも、データがある2000年以降、右肩上がりで増え続けており、いまやOECD平均の2.25倍となっている。

 それでも、これまでは薬剤師の養成数を減らすといった施策は取られてこなかった。その理由の一つとして、現場では薬剤師の不足感が蔓延していることが挙げられる。実際、薬局の経営者らに話を聞くと、薬剤師不足が深刻で、「人がなかなか入らない」「すぐ辞めてしまう」などと嘆く声が少なくない。

 ただ、薬剤師不足は、ある意味“作られた”側面がある。日本では基本的に薬剤師が調剤業務を一手に引き受けている。また、医薬品医療機器等法に基づく省令で、薬局の薬剤師は1日平均で40枚の処方箋しか処理してはいけないことになっている。

 片や欧米では調剤業務のほとんどを調剤助手が手掛け、薬剤師はカウンセリングや医師と協力して薬物治療を施すなど、もっとハイレベルな業務を担っている。さらに言えば、米国など、薬局での薬剤師によるワクチン接種を認めている国もあり、今般の新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種でも薬剤師が活躍している実態がある。

 日本でも2019年4月2日に厚労省が発出した通知で、調剤業務のすべてを薬剤師が担うのではなく、錠剤のピックアップなど機械的な調整作業は非薬剤師が扱えるようになった。だが、軟膏や水剤、散剤は、依然として薬剤師が計量、混合する必要がある。ワクチン接種に関しては一部で薬剤師による接種を期待する声もあるが、日本薬剤師会自体が権限拡大を望む声を上げておらず、実現は今のところ夢物語でしかない。

 ともあれ、日本では調剤にかかわる業務量が多く、おまけに薬剤師の員数規定もあるから、特に地方を中心に薬剤師不足の状態が続いているのだ。

 そうした事情を背景に、薬学部新設の動きも止まらない。大学設置基準の緩和で2003年以降、新規開設が相次ぎ、全国の薬科大学・薬学部の設置数は2002年度の47校から2020年度には過去最多の77校にまで膨れ上がった。

 結果、薬剤師の養成数も増加。だが、地方は相変わらず薬剤師不足。つまり薬剤師の偏在問題が浮き彫りになっている。